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論文「食用昆虫の栄養成分と安全面」の紹介

Review: Nutritional composition and safety aspects of edible insects
レビュー:食用昆虫の栄養成分と安全面

食用昆虫は世界に1900種いるといわれているが、その栄養に関する報告はまだまだ未知のものが多い。
上記のレビューは、かつてない非常に多くのデータ(236種の食用昆虫)をまとめて食用昆虫全般、それぞれの目の栄養価についておおよそ言えそうなことを報告している。この概要と注目すべき点を以下に紹介する。(報告者:水野)

【用語】----------------------------------
Odonata:トンボ目
Isoptera:シロアリ目
Hymenoptera:膜翅目
Orthoptera :直翅目

正味タンパク質利用率(NPU)、タンパク利用効率(PER):NPUは、摂取したタンパク質(窒素)のどれだけの割合が体のタンパク質(窒素)として保持されたかを表す。成長を指標にタンパク質の栄養価を判定する方法の一つ.成長中の動物に与えたタンパク質1gについて体重が何g増加したかを示す指標。タンパク質効率比 (protein efficiency ratio,PER) が,体重増加量で評価するのに対して,同一の条件の動物に無タンパク質食を与えて,その動物の最終体重と試験タンパク質を与えた動物の体重の差をとるところに特徴がある。

PUFA:多価不飽和脂肪酸 EPAとDHAといったω-3系脂肪酸は中性脂肪、善玉コレステロールを増やす
MUFA:一価不飽和脂肪酸 悪玉コレステロールを減らす
SFA:飽和脂肪酸 コレステロール、中性脂肪を増やす
---------------------------------------------

1.導入

236種の様々な食用昆虫のアミノ酸、脂肪酸、ミネラル、ビタミンを含む栄養成分データを編集・比較し、昆虫食のリスクとベネフィットを議論する。取り上げられたデータはかなりのばらつきがあるが、多くの食用昆虫は人間の要求に見合うエネルギーやたんぱく質、アミノ酸を含み、不飽和脂肪酸含量も高く、銅、鉄、マグネシウム、マンガンといった微量栄養素も豊富に含んでいるといえる。

2.NFE、灰分、エネルギーの評価

※計測値は乾燥重量である。
・昆虫種や発育ステージによって違いが出たが、これは飼料や飼育方法の違いによることも考えられる。

繊維:クロアリPolyrhachis vicina Roger 、蛾の幼虫Latebraria amphipyrioidesは30%と高い割合を示した。一方、マゲイという植物につく幼虫Aegiale hesperiarisは0.12%、ミツバチの幼虫は1%と低かった。コオロギBrachytrupes ssp.も1~12%と低かった。

NFE:繊維をのぞく炭水化物の量を示す。一番高いのはシロアリ目22.84%、低いのはトンボ目4.63%。高い含量を示す種は、コオロギBrachytrupes ssp.で最大85.3%、膜翅目でミツツボアリの一種?(Myrmecosistus melliger)77%、ミツバチ22~74%。

灰分:双翅目が一番高く、ハナアブの1種Eristalis spで25.95%。蚊(Krizousacorixa azteca)の卵も10.3%と多い。

エネルギー:鱗翅目においては大きくばらつきが出たが、113種の中で8割近くが400kcal/100gを超え、4割が500kcal/100gを超えた。このことから、多くの食用昆虫は食用肉のカロリーと比肩しうるものであることが示された。

タンパク質:大豆と比較しても非常に高い値を示す昆虫種が多い。特にバッタは、必須アミノ酸を豊富に含む優れた代替タンパク源として期待できる。

3.タンパク質とアミノ酸 
※たんぱく質含量は窒素含量に6.25をかけて計算
・離乳児のラットを2種のクリケット(イエコオロギAcheta domesticusとキリギリスの1種Anabrus simplex)で育てた場合、大豆で育てた場合と比較してアミノ酸スコアが同等か優れているという結果がでたという報告がある。一方カイコで育てた場合、カイコは飼料接収量、タンパク質消化率、タンパク質効率比、正味タンパク質利用率において高い値を示したにもかかわらず、カゼインよりタンパク質の質は顕著に低かった。これは蛹特有のにおいによる摂食阻害と、蛹化に伴うエクダイソンの影響によるものと思われる(①)。
・イエバエの幼虫を10-15%飼料に混ぜて育てると、ブロイラーの雛鳥の肉質が向上し、胸肉のリシンとトリプトファンが増加した。イエバエ幼虫は(乾燥重量)タンパク含量64%、タンパク質消化率98.5%という高いスペックをもつためである(④)。
・カイコの卵のアミノ酸スコアは100に対し、蛹のスコアは60(②)、カゼインは55.3(③)。
・乾燥させたミツバチと生のミツバチのキチンをアルカリ処理しタンパク質を抽出したものをラットに摂取させた結果、抽出したタンパク質の方が正味タンパク質利用率とタンパク質効率比ともに増加する(③)。カゼインや大豆との比較で昆虫のタンパク質の質は高いと評価できたが、タンパク質消化率を高めるためのキチン除去方法は検討の余地がある。

4.脂質 

・昆虫全般に魚やガチョウと比肩しうる不飽和脂肪酸の量であり、PUFAが多い(⑤)。
・牛や豚肉はほとんどPUFAを含まず、MUFA含量の方が高い。牛や豚と似たような脂肪含有率を持つのはアリであり、MUFAの占める割合は73%にのぼり(⑥)、PUFAは3%とわずか(⑧)。
・食用昆虫において飽和/不飽和の値は平均0.43~0.79であり(⑦)、明らかに不飽和脂肪酸の割合が高い。
・動脈硬化の予防のために、一日あたりEPAとDHA合計 500mgを摂取することが推奨されている。これは1週間で180gの魚を摂取することに相当する。昆虫にはEPAとDHAはわずか、あるいは全く含まれていない。ただし、SFA摂取をαリノレン酸やリノール酸といったPUFAの必須脂肪酸摂取に置き換えることで動脈硬化のリスクを減少させることができるといわれている。
・昆虫の脂肪酸の構成はほかの家畜と同様、飼料によって大きく影響される(⑨,⑩)。例えば、アメリカミズアブのEPAとDHAは魚の廃棄物を与えることによって得られる(⑪)。

5.ビタミンとミネラル
・ナイジェリア産の昆虫のほとんどがミネラル分が比較的低い。食べている物によると思われる。
・イエバエ幼虫を除き、調査した全ての昆虫はカルシウムが低く、100gあたりでは成人の所要量を満たさなかった。
・100gの乾燥重量の昆虫は1日あたり4700mgのカリウム要求量を満たさなかった。一方、ほとんどの昆虫がリンに関しては非常に高い含有量を示し、60種中24種が成人の所要量を満たした。
・ナトリウム含量は総じて昆虫は少ないが、チョウ目の幼虫ののみが高いナトリウム含量を示した。2種において100gあたり1日摂取量1500mgを超える種もある。
・77種の昆虫のうち、23種がマグネシウム所要量を満たした。
・南京虫をはじめとするOrthopteraのいくつかの種は特にマグネシウム含量が高い。
・鉄の所要量は性別や年齢によって大きくばらつく、閉経前の女性は男性や閉経後の女性の倍の鉄分が必要である。閉経前の女性の所要量を1日あたり58.5mgとすると、82種の内10種が所要量を満たし、特にcricket (Onjiri mammon) と数種のケニア産シロアリにおいて顕著であった。鉄分供給の面では昆虫は必ずしも最適とはいえないが、亜鉛に関しては多くの食用昆虫で含量が高い。特に、Orthoperaは亜鉛供給食品として機能する。昆虫食の奨励が、途上国における亜鉛欠乏症を減少させるかもしれない。
・シロアリと甲虫をのぞき、大半の食用昆虫がマグネシウムや銅の所要量を十分満たしている。つまり、昆虫食はカルシウムやカリウム摂取はほとんどできないが、微量栄養素であるマグネシウム、銅、リン、セレン、鉄、亜鉛といった微量栄養成分の供給源としては有望である。


6.ビタミン 
・昆虫のビタミン含量については報告が少なく、データに偏りが出る可能性がある。
・昆虫の乾燥重量でみると、リボフラビン(B2)、パントテン酸(B5)、ビオチン(ビタミンH、B7)に富んでいる。
・Orthoptera やColeopteraはほかに葉酸(B9)が豊富である一方、ビタミンA,C,ナイアシン、場合によってはチアミン(ビタミンB1)が不足している。
・昆虫の糞茶は100gあたり15.04mgのビタミンCを含んでいる報告もある(⑫;チョウ目の糞)、成人1日あたり45mgのビタミンC摂取を奨励しているため、1日あたり300mlの糞茶でビタミンCの所要量は満たされる。
・ビタミンE活性はαトコフェロールのみから出来るだけではなく、トコトリエノールやトコフェノールを含む抗酸化物質にも含まれるため、計測することがむずかしい。しかし、ワックスワームやイエコオロギをのぞいてほとんどの食用昆虫においてビタミンE活性が純粋なαトコフェロールからみられた。

7.リスクファクター
・アフリカのアナフェのさなぎは熱耐性チアミナーゼ(ビタミンB1分解酵素)をもち、ナイジェリアにおいてここ40年でビタミンB1欠乏症を招く原因となった。
・シアン化水素、シュウ酸、フィチン酸、タンニンの4つの抗栄養物質の量を4種の昆虫において計測したところ、いずれも人間の通常の接収量で毒性を示すほど含量は高くないことが示された(⑬)。Cirina fordaの幼虫においてもシュウ酸やフィチン酸含量は低く、タンニンは検出されなかった(⑭)。
・殺虫剤を使用したエリアで育った昆虫は安全に食べられていることも報告されている(⑮)が、殺虫剤を散布しない植物で育てる管理をすることで、殺虫剤のリスクを減らすことができる。

結論

食用昆虫は一般にエネルギー、タンパク質、脂肪、微量栄養素といった質の観点から食料として有望であると結論づけられる。しかし、栄養素は主に飼料によって強い影響を受けることは念頭に入れておくべきである。このことは逆にDHAやEPAなどを付加させたり、不必要な成分を制限したりすることができる可能性があるともいえる。
アレルゲン、抗栄養物質に関しても、さらにリサーチを行い、正しく管理していくことが必要である。


関連文献

①Finke, M. D., Defoliart, G., Benevenga, N. J., Use of a four-parameter logistic model to evaluate the quality of the protein from three insect species when fed to rats. J. Nutr. 1989, 119, 864–871.
②Rao, P. U., Chemical composition and nutritional evaluation of spent silk worm pupae. J. Agric. Food Chem. 1994, 42, 2201–2203.
③Ozimek, L., Sauer, W. C., Kozikowski, V., Ryan, J. K. et al., Nutritive value of protein extracted from honey bees. J. Food Sci. 1985, 50, 1327–1332.
④Hwangbo, J., Hong, E. C., Jang, A., Kang, H. K. et al., Utilization of house fly-maggots, a feed supplement in the production of broiler chickens. J. Environ. Biol. 2009, 30, 609–614.
⑤DeFoliart, G., Insect fatty acids: similar to those of poultry and fish in their degree of unsaturation, but higher in the polyunsaturates. Food Insects Newsl. 1991, 4, 1–4.
⑥Sihamala, O., Bhulaidok, S., Shen, L.-r., Li, D., Lipids and fatty acid composition of dried edible red and black ants. Agric. Sci. in China 2010, 9, 1072–1077.
⑦Yhoung-aree, J., in: Durst, P. B., Johnson, D. V., Leslie, R. N., Shono, K. (Eds.), Forest Insects as Food: Humans Bite Back, FAO, Bangkok, Thailand 2010, pp. 201–216.
⑧Bhulaidok, S., Sihamala, O., Shen, L., Li, D., Nutritional and fatty acid profiles of sun-dried edible black ants (Polyrhachis vicina Roger). Maejo Int. J. Sci. Technol. 2010, 4, 101–112.
⑨Ramos-Elorduy, J., Gonzalez, E. A., Hernandez, A. R., Pino, J. M., Use of Tenebrio molitor (Coleoptera: Tenebrionidae) to recycle organic wastes and as feed for broiler chickens. J. Econ. Entomol. 2002, 95, 214–220.
⑩Ritter, K. S., Cholesterol and insects. Food Insects Newsl. 1990, 3, 1–8.
⑪St-Hilaire, S., Cranfill, K., McGuire, M. A., Mosley, E. E. et al., Fish offal recycling by the black soldier fly produces a foodstuff high in omega-3 fatty acids. J. World Aquacult. Soc. 2007, 38, 309–313.
⑫Chen, X., Feng, Y., Chen, Z., Common edible insects and their utilization in China. Entomol. Res. 2009, 39, 299–303.
⑬Ekop, E. A., Udoh, A. I., Akpan, P. E., Proximate and anti-nutrient composition of four edible insects in Akwa Ibom State, Nigeria. World J. Appl. Sci. Technol. 2010, 2, 224–231.
⑭Omotoso, O. T., Nutritional quality, functional properties and anti-nutrient compositions of the larva of Cirina forda (Westwood) (Lepidoptera: Saturniidae). J. Zhejiang Univ. Sci. B 2006, 7, 51–55.
⑮Schabel, H. G., in: Durst, P. B., Johnson, D. V., Leslie, R. N., Shono, K. (Eds.), Forest Insects as Food: Humans Bite Back, FAO, Bangkok, Thailand 2010. pp. 37–64.

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