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昆虫食はエコなのか?

オランダのワーヘニンゲン大学(Wageningen University)の昆虫学研究室では、昆虫食研究がとても盛んに行われている。
ワーニンゲン大学
建物がかっこいい。(http://www.ent.wur.nl/UK/contact/

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事にその力の入り具合を示す次のような記述があった。

We continue to make progress in the Netherlands, where the ministry of agriculture is funding a new $1.3 million research program to develop ways to raise edible insects on food waste, such as brewers' grain (a byproduct of beer brewing), soyhulls (the skin of the soybean) and apple pomace (the pulpy remains after the juice has been pressed out).

なんとこの研究室は、食品廃棄物処理のための食用昆虫の研究という名目で、オランダの農業省から130万ドル(1.04億円)もの助成金を獲得しているのだ!すごい!!



この研究室では、昆虫は牛や豚を生産するよりも温室効果ガスの発生量が少なく、非常にエコな食料である、ということを様々な場所で主張している。

オランダで「昆虫料理本」出版、人口増加に備えたタンパク質源に ロイター

昆虫の生産過程で排出される温室効果ガスの量は、豚を飼育する過程と比べて100倍少なくなるとしている。


The Six-Legged Meat of the Future, The Wall Street Journal

Insects also produce far less ammonia and other greenhouse gases per pound of body weight.
(昆虫はほかの家畜と比べて、体重あたりに排出するアンモニアと温室効果ガスの量が非常に少ない。)


Save the planet: Swap your steak for bugs and worms, Reuters

The professor at Wageningen University in the Netherlands said insects have more protein than cattle per bite, cost less to raise, consume less water and don't have much of a carbon footprint.
(ワーヘニンゲン大学の教授によると、昆虫はウシよりも、エサあたりに生産できるタンパク質が多く、飼育コストが低く、使用する水も少なく、カーボンフットプリントが小さい。)




そんな研究室から発表された論文を紹介したい。
Oonincx, D.G.A.B, et al., 2010. An Exploration on Greenhouse Gas and Ammonia Production by Insect Species Suitable for Animal or Human Consumption. PLoS ONE 5(12)
(家畜または人間の食用に供される昆虫が産出する温室効果ガスまたはアンモニアの調査)

PLos ONEという影響力を持つ学術誌に掲載されたことで、発表当時は大きな話題となった。

内容はおおまかに言うと、昆虫は温室効果ガスの排出がウシやブタに比べて少なく、昆虫はエコフードだというもの。

…であるはずだった。

試しに昆虫に対してネガティブに表を読み取っていきたい。

table 2.1
1日あたり、体重1kgあたりに放出される二酸化炭素量は、ウシやブタよりも昆虫の方が大きい。


table 3
・コガネムシは、メタンガス排出量がブタよりも大きくなる可能性がある。
・トノサマバッタは、亜酸化窒素排出量がブタより大きくなる可能性がある。
・コガネムシ、トノサマバッタは、二酸化炭素相当量がブタ、ウシよりも大きくなる可能性がある。
(温室効果への寄与度で見たとき、メタン、亜酸化窒素は、それぞれ二酸化炭素の25倍、298倍であることを考慮して換算)
・コオロギ、トノサマバッタは、アンモニア排出量がブタと同等である可能性がある。


table 4
・コガネムシは、体重1kg増加させる際に排出されるメタンガスの量がブタよりも大きい可能性がある。

また、Discussionの部分でも気になった箇所を、ネガティブに引用していこう。

All five species in the current study had a fairly high production of CO2.(5種の昆虫は、けっこう多くの二酸化炭素を排出した。) This might to a large extent be explained by ad libitum feeding during the experiment that has been reported to increase oxygen consumption fivefold [22].Reported CO2 production for inactive, unfed, Tenebrionid adults ranged between 5.4–13.3 g/kg BM/day [27], which is 5–10 times lower than observed for T. molitor in this experiment.(だけど、エサを与えずにじっとさせておいたゴミムシダマシの二酸化炭素排出量は、今回実験に用いたエサ食べ放題にさせたゴミムシダマシのそれの1/10~1/6であった。)

「今回昆虫は二酸化炭素をけっこう排出したけど、もしエサを食わずにじっとしていれば、あんまり二酸化炭素出さないよ。」なんてわざわざ言うあたりに著者の苦しさを感じる。

The CO2 production per kg BM of insect species investigated in this study was higher than for pigs or cattle (Table 3).(体重1kgあたりに排出される二酸化炭素量は、昆虫の方がブタやウシよりも大きかった。)

そして、昆虫の方が二酸化炭素を排出しうることを認めた。



さて、この論文の結論を著者はどのようにまとめているのか。

Conclusions / Significance
This study therefore indicates that insects could serve as a more environmentally friendly alternative for the production of animal protein with respect to GHG and NH3 emissions. The results of this study can be used as basic information to compare the production of insects with conventional livestock by means of a life cycle analysis.
(この研究は、温室効果ガスとアンモニアガス排出という点において、昆虫が他の家畜よりも環境にやさしい動物性タンパク源になり得ることを示唆する結果となった。この研究成果は、昆虫生産と一般的な家畜生産を、life cycle analysisによって比較するための基礎情報となるだろう。)

これを見てわかるように、著者らは「昆虫の方がブタやウシよりも環境にやさしい食料である」とは断言していない
そう、結局昆虫がエコフードであることを示すクリアな結果が出なかったのだ。

その一方で、インタビューなどに対しては自身ありげに昆虫は環境にやさしいということを言いまわっている。
一体その根拠はどこにあるのだろうか…

このオランダの研究者たちは昆虫食の真の価値を見誤っているのように思う
この辺については、また追々このブログで考えていきたい。


※この記事は「昆虫を食べることが環境にやさしくない」ということを主張するものではない。
先の論文を読めばわかるが、昆虫も種によってはウシやブタよりも環境的に優れている部分が多くあることは事実である。

この記事は、「昆虫食=エコ」という短絡的な発想によって、昆虫食の意義を考えることを放棄し、昆虫食の可能性までも制限してしまうことを避けたいがために書いたものである。

<三橋亮太>
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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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