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FAO 2013年報告書5章から 食料および飼料としての昆虫生産の環境面での可能性~昆虫は家畜と比較してエコなタンパク源となるか考える~

                                          文責 水野 壮
導入
家畜の生産量は農業用地の7割使用に匹敵する。2000年から2050年にかけて家畜生産量の需要は22900万トン~46500万トンへと倍に増加。家畜や魚介類は高い生産量をもつため、大規模生産施設は短期的にいえば経済的に実現可能であるが、環境にかかる負荷は大きい。生産量を増加させるためには、農地の拡大が必要となり、森林の減少につながる。
ここ5年間で劇的に魚介類の生産と消費量は増えたが、昆虫は魚油や魚粉の代替としても有望である。
増加し続ける需要に見合った食糧生産は技術革新によって可能になっているが、農業は人為的な気候変動を引き起こしてきており、今後は持続可能に生産するために新しい農業技術や食習慣が必要である。
新しい食習慣の一つとして、昆虫が挙げられる。昆虫食は、以下の特徴がある。
・高い飼料変換効率(体重増加量/消費飼料量)
・有機物の副生産物として利用できる、付加価値がつく。
・相対的に温室効果ガスやアンモニア排出量が低い。
・畜牛より水分消費量が低い
・動物福祉(動物への痛みやストレス軽減)の観点からの問題が少ない。
・動物由来感染症のリスクが低い
上記の利点があるにもかかわらず、西側諸国の消費者にとって昆虫食は心理的に受け入れ難い。しかし、グローバル化によって食生活の変化は迅速におこなわれてきたことは、歴史が物語っている。(よい例として、寿司の急速な普及)

昆虫を利用した副生産物
・肥料、スラリー、コンポストへの利用
・有機物系の廃棄物(動物排出物、木屑など)で昆虫を育てる
・イエバエ、キイロゴミムシダマシ(ミールワーム)、アメリカミズアブが有望
・未知の病原体や異物混入の可能性は排除できず、現状では法的に制限されている。
例:エコ・ディプテラプロジェクト
2004年にEUが進める環境保護プロジェクトLIFEの中で採択された、ハエを使って豚の糞を肥料やたんぱく質に変換するプロジェクトのこと。昆虫の新しい利用形態として注目されている。このプロジェクトの目的は、新しく生産物を消費することなく、新しい生産物をえるため、ハエの大量発生という問題と豚の排泄物処理という問題を、環境負荷を与える手段ではなく、持続可能な手段で解決するため、などがある。

水消費量
バーチャルウォーター(ある食料にかかったコストを水で換算する)で考えると、鳥肉1kgの生産に必要な水は2300リットル。豚肉1kgの生産に必要な水は3500リットル、牛肉1kgの生産に必要な水は22000リットル、昆虫の数値はないが、乾燥に耐えられることから、これらよりはるかに低いことが容易に予想される。
地球温暖化ガスとアンモニアの放出
家畜の放出する温室効果ガスは輸送部門と並ぶほど高い割合を占めており、環境負荷の軽減が求められている。家畜の主要な温室効果ガスの発生源は、糞尿と反芻動物特有の腸内細菌の発酵作用が主である。過剰なアンモニア放出は土壌から窒素を流出させ河川・海の富栄養化および土壌酸化を引き起こすことから、排出量を抑えていく必要がある。
1
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昆虫(ミールワーム、コオロギ、バッタ)と家畜とで比較してみると、体重1kg増加あたりの温室効果ガス放出量(二酸化炭素換算)は豚や牛よりもかなり低い。
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以下のTable4.は上図の引用元(Oonincx et al., 2010;②)のデータ。
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昆虫と家畜の体重1kgあたりの必要飼料および可食部の比較は以下。トリでは2.5kg、豚では5kg、牛では10kgであるのに対し、昆虫(バッタ)の場合は1.7kgですむ。さらに、可食部で換算すると昆虫は体重の8割が可食部であり、チキンの倍、豚の4倍、牛の12倍に達する。これは昆虫が冷血動物であり、体温維持のためのコストを必要としないからと考えられる。
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主要タンパク源生産に必要な、地球温暖化ガス放出量、エネルギー消費量、土地利用面積の昆虫(ミールワーム)と家畜の比較。各個体のライフサイクルすべてを通して計算したーデータ。土地利用面積、温室効果ガス放出量は昆虫のほうがほかの家畜より低い。一方、エネルギー消費量はわずかに鳥肉やミルクより高くなった。このことは、昆虫は変温動物であり恒温動物より温度管理が必要であることからエネルギーが余計に必要になったからだと考えられる(Oonincx and de Boer, 2012;③)。
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ちなみに、1日分と体重あたりで計算したデータがFig5.4の引用元(Oonincx et al., 2010;②)を見ると以下のようにあるので、
8
牛とバッタが700kgに成長するまでに放出する温室効果ガス(二酸化炭素換算)量を大よそで計算してみると、以下のようになる。牛の出荷時の体重は700kg、出生から出荷までの日数を1000日、出生時の体重を30kg(東京都中央卸売市場食肉市場HPより概算)とする。

【牛】:
5.98 g/kg BM/day ×(700 kg+30 kg)× 1000 日数× 1/2 = 2,182,700 g
ちなみに、可食部1kgあたりの温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)は、可食部40%(Huis, 2013;④)とすると、
2182700 g / (700kg × 0.4) = 7795.36
【バッタ】(出生時の総体重3.5kg(0.01 g/匹×350000匹)、出生から出荷までの日数30日間とする):
2.37 g/kg BM/day × (700 kg + 3.5 kg) × 30 日数 × 1/2
=25009.43 g
同じように、可食部1kgあたりの温室効果ガス排出量は、可食部80%(Huis, 2013;④)とすると、
250009.43 g / (700 g × 0.8)= 44.66
以上より、牛一頭出荷させるのに必要な重さをバッタで同じように生産させる場合、その間に放出する温室効果ガスの量は牛の方がバッタより100倍近い。

参考文献
① FAO 2013. Edible insects: future prospects for food and feed security.
② Oonincx DG, van Itterbeeck J, Heetkamp MJ, van den Brand H, van Loon JJ, van Huis A. 2010. An exploration on greenhouse gas and ammonia production by insect species suitable for animal or human consumption. Plos. One, 5:e14445.
③ Oonincx DG, de Boer, I.J. 2012.Environmental Impact of the Production of Mealworms as a Protein Source for Humans – A Life Cycle Assessment. Plos. One, 7:e51145.
④ van Huis, A.2013. Potential of insects as food and feed in assuring food security. Annual Review of Entomology, 58(1): 563–583.






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