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FAOの昆虫食報告書”Edible insects Future prospects for food and feed security”の要約(日本語)

こんにちは。食用昆虫科学研究会の吉田です。

最近話題になっていますFAOが出した食用昆虫についての報告書ですが、さまざまな報道機関が記事を出していますね。
ただ、その原文については、英語ということもあり、読んだ人が少ないのではないでしょうか。

→→FAOの原文ページはこちら

と、いうわけで、報告書の要約をざっと日本語に訳しました。以下が冒頭の日本語訳になります。

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FAO報告書 summary 日本語訳

この日本語訳はFAO報告書"Edible insects Future prospects for food and feed security" の巻頭 ⅹⅲ~ⅹⅵページの"Executive summary" を訳したものです。

要旨
この本は昆虫の食用および飼料としての可能性を評価し、食用昆虫に関する既存の情報や研究をまとめたものです。様々な情報源や世界中の専門家による最新かつ十分なデータに基づいて評価を行なっています。
食料源や飼料源としての昆虫が注目を浴びているのは、動物性タンパク質のコストの上昇、フードセキュリティ、環境圧、人口の増加と中間所得層のタンパク質需要の増加などの21世紀の問題と特に関連があります。上記のような問題から、従来の家畜や飼料源の代わりを見つけることが急がれています。それゆえ昆虫を消費する、すなわち"entomophagy(昆虫食)"が、地球環境と健康、そして生活に対して有益に貢献するのです。
この報告書は、2003年にFAOの森林部門による小さなレポートから始まりました。そのレポートは中央アフリカでの伝統的な暮らしの中での昆虫の役割を記述し、自然環境で昆虫を収穫することが森林の持続可能性に与える影響を評価することを目標にしていました。この取り組みが、昆虫は世界の食料安全保障をのプラスとなる可能性を明らかにするために、様々な視点から昆虫採集や養殖について検証する取り組みへと発展していきました。この本の目的は、昆虫を食料や飼料として用いる多くの機会と制約について、世界に先駆けてまとめることにあります。

 昆虫の役割
昆虫は少なくとも20億人の伝統食の一部であると推測されています。1900種以上の昆虫が食料として扱われていると報告されています。昆虫は生態系サービスの主体であり、人類の生存に必要なものです。また、昆虫は作物生産のうち、受粉という重要な役割を担っており、廃棄物の再利用を通じて土壌の栄養状態を改善する、有害病種の自然由来の調節者としても重要な役割を担っています。そして昆虫は、蜂蜜や絹、蛆虫療法といった医療法などの、様々な価値を人類に提供しています。さらに昆虫は人間の文化の中にも受け入れられており、コレクションや装飾品、映画や絵画、文学にも見られます。世界的に最も普遍的に消費されている昆虫としては甲虫(甲虫目Coleoptera 31%)、芋虫(鱗翅目Lepidoptera 18%)、蜂や蟻(ハチ目Hymenoptera 14%)が挙げられます。続いてバッタ、イナゴ、コオロギ(直翅目Orthoptera 13%)、セミ、ヨコバイ、ウンカ、カイガラムシ、カメムシ(カメムシ目Hemiptera 10%)シロアリ(等翅類Isoptera 3%)、トンボ(蜻蛉目Odonata 3%)、ハエ(ハエ目Diptera 2%)そして、その他の目の昆虫が食べられています。

 文化
昆虫食は文化的、宗教的慣習に強く影響を受けており、昆虫は世界の多くの地域で食用源としてよく消費されています。しかしながら、西洋のほとんどの国では、人々は昆虫食を軽蔑し、昆虫食を原始的な(野蛮?)行為と見ています。この姿勢が農業研究における昆虫の無視・軽視につながってきました。食料としての歴史上には昆虫の使用への記述があったにも関わらず、昆虫食はかなり最近になってやっと世界中の注目を集め始めました。

 自然界の資源としての昆虫
食用昆虫は、水域から農地、森林に至るまで多種多様な環境下に生息しています。最近まで。昆虫は自然界から収穫できる無限にある資源と見られてきました。しかし、いくつかの食用昆虫は現在、絶滅の危機にあります。採り過ぎ、汚染、野火、生息地域の破壊などのたくさんの人的要因から多くの食用昆虫の生息数は減少してきました。気候変動は食用昆虫の分布と安定供給に影響するようですが、どうして影響するかはまだそれほど知られていません。この報告書は、昆虫種やその住処となる植物を守るために地域住民にが行う保全戦略や半栽培の実践について、いくつかの地域での事例研究を記載しています。このような取り組みは昆虫の生息環境の保全状況改善に貢献するでしょう。

 環境による機会
昆虫を食料や飼料として育てることの環境的な利点として、昆虫の飼料変換効率の高さが指摘されています。例えば、コオロギは1㎏重量が増えるために、たった2㎏しか要しません。さらに、昆虫は人間や動物の廃棄物を含む、副産物的な有機物でも育てる事ができ、環境汚染の削減に貢献することもできます。昆虫は牛や豚に比べ少量の温室効果ガスやアンモニアしか排出せず、牛の飼育に比べてはるかに小さい土地と少量の水しか必要としません。また、さらなる調査を必要としますが、哺乳類や鳥類に比べて昆虫は、人間や家畜、野生動物への人畜共通感染症へのリスクも小さいかもしれません。
 
 人間が消費する上での栄養
昆虫は高脂肪、高タンパク、ビタミン、食物繊維やミネラルに富んだ、高栄養かつ健康的な食糧源です。昆虫の種の多さから、食用昆虫の栄養価はかなりばらつきがあります。同じ目や科の昆虫でさえ、変態の段階、生息環境や食料などによって栄養価が異なることもありえます。例として、ミールワームに含まれるオメガ-3-酸と6種の脂肪酸は、魚類に匹敵し(牛や豚よりも多く)、そしてタンパク質、ビタミンやミネラル含量は魚類や肉類と同程度です。

 養殖システム
ほとんどの食用昆虫は野生で捕獲されます。しかし、ハチや蚕といった数種の昆虫はその生産物の価値から、家畜化の長い歴史をもっています。また昆虫は生物農薬(天敵や寄生虫として)や健康(蛆虫療法など)、そして受粉という目的のために大量に飼育されています。しかし、食料として昆虫を飼育するという概念は比較的新しいです。熱帯地方における人間の消費としての昆虫の飼育の例としては、ラオス、タイ、ベトナムにおけるコオロギ養殖が挙げられます。
温暖な地域において昆虫養殖は、ミールワームやコオロギ、バッタをペットや動物園用に大量に養殖する家族経営の会社が大きな役割を果たしています。こうした会社の中には、最近になって食料や飼料として昆虫養殖を商業化できたものもあり、人間が直接消費するための生産はまだまだごく少量です。
小数の工業規模(大規模)な企業は、アメリカミズアブなどの昆虫を大量に飼育するスタートアップの様々な段階にあります。そうした昆虫の大部分はそのまま食されるか飼料として加工されます。養殖が成功するために大切なこととして、養殖される昆虫についての生態学や養殖環境のコントロール、そして配合飼料に関する調査があります。現在の生産システムは高価であり、多くの資金を要します。そうした産業規模の養殖の挑戦の代表的なものとして、伝統的な家畜や養殖資源から、食肉(もしくは大豆のような肉代替物)生産と経済的に競合するような植物をつくるための自動栽培工程の開発があります。

 動物の飼料としての昆虫
近年の魚肉と大豆に対する高い需要と価格高騰の結果、水産物の生産増加と相まって、水産養殖や家禽のために昆虫のタンパク質を開発へ向けて新たな研究が行われています。昆虫を基本とする飼料生産物は、現在水産養殖や家畜生産の配合飼料のうち大部分を占めている魚肉や大豆と同じような市場規模へと成り得ます。昆虫を基本とする飼料は魚肉や大豆を基本とする配合飼料に匹敵することは現在までの情報からわかっています。生きているもの、そうでないものであれ昆虫は、主にペットや動物園に飼料としてニッチな市場を形作っています。

 加工
昆虫はよく丸ごと食されますが、粉末状やペースト状にも加工できます。タンパク質や脂質、キチンやミネラルを抽出することも可能です。現在のところ、そうした抽出工程はコストが高すぎるため、食品や飼料業界で産業利用できるように、利益を出し、適合させるには、さらに発展させる必要があるでしょう。

 食品の安全と保存
昆虫とその製品の加工と保存は、食品の安全を担保するために、他の伝統的な食品や飼料と同じくらい、健康および公衆衛生の規則に則っているべきです。生物学的な成り立ちから、微生物の安全、毒素、美味しさ、そして無機物質の存在といったいくつかの項目を考慮されなけらばなりません。また肥やしや食肉解体場での廃棄物といった廃棄品からの生産物で昆虫が飼育された時には、特に健康への影響は考慮しなければなりません。昆虫の摂取によってアレルギー症状が出るという証拠はほとんどありませんが、あることには間違いありません。節足動物へのアレルギー反応はいくつか報告されています。

 家畜としての改善
家事レベルであれ、企業レベルであれ、小家畜としての昆虫の採集や飼育は、開発途上国、先進国双方の人々の重要な生活基盤となります。開発途上国では、都市、地方において女性や土地を持たない住民といった社会の最貧層の人々の中でも簡単に昆虫の採集、養殖、加工、販売に関わることができる人もいます。これらの活動は直接的に彼女らの食生活を改善するだけでなく、屋台で余った昆虫を売ることによって現金収入を得ることもできるようになります。昆虫は直接的にそして容易に、自然から集めたり、最低限の技術と支出(基本的な養殖装置)で養殖したりできます。また、昆虫がすでに地元の食文化の一部となっているときには、昆虫の飼育は最小限の土地と市場への参入努力しか要しません。
タンパク質や他の栄養素の欠如は社会的に脆弱な層の中で、社会的対立や自然災害の際に典型的に広がります。昆虫の栄養価、入手の用意さ、単純な飼育技術、そして早い成長速度から、昆虫は、緊急の食料供給、社会的に脆弱な人々の生活基盤や伝統的な食事の改善などによって、栄養不足を克服する状況を安価かつ効率的に作り出せます。

 経済成長
昆虫の採集および養殖は、家庭内労働レベルであれ、大きな、産業規模な操業であれ、雇用と所得を産みます。南部および中央アフリカや東南アジアの開発途上国では食用昆虫への需要があり、市場へと昆虫を持ち込みやすく、昆虫を採集、養殖、加工して屋台で売ったり、鶏肉や鮮魚の飼料とすることは小規模の企業にとって容易に実現できます。ごく小数の例外を除いて、昆虫の国際取引はほとんどありません。先進国に対して行われる取引はしばしば、コミュニティーの移民による需要に由来したり、異文化の食品を売るニッチな市場の発展によるものです。国境での貿易は盛んで、主に東南アジアや中央アフリカで行われています。

 コミュニケーション
昆虫食の慣習を取り巻く賛成・反対といった見方は必ず、様々な利害関係者個々による、緻密なコミュニケーションによる歩み寄りを要します。昆虫食が十分に確立している熱帯では、食の西洋化の拡大に対抗するために、有望な栄養源としての食用昆虫をメディア・コミュニケーションの方針として推奨していくべきです。西洋社会では、不快な要因に対処する、メディアを通じた緻密なコミュニケーションと教育的なプログラムが必要です。昆虫が持つ食料および飼料源としての可能性について価値のある情報を提供して、食料や飼料部門の政策決定者や投資家と同様に広く一般にも訴えかけることにより、昆虫は政治的に、世界的な投資や調査の項目として認知されるかもしれません。

 法律制定
食品と飼料流通を統治する規則の枠組みはここ20年で途方もなく大きく拡大してきました。しかし、食品や飼料として昆虫を定める規制はまだほとんどありません。先進国では昆虫を食品や飼料として使うことへの明確な規則や言及が欠如しており、食品・飼料業界へ昆虫を供給するための養殖が産業的な発展するのを妨げる大きな要因となっています。開発途上国では昆虫を人間の食料および動物の飼料として用いることが実際のところ規則されているよりも広く認められています。飼料業界はより昆虫を含む基準を推し進めてリードしていくようですが、食品業界では食品として昆虫を用いることへのルールと基準を作るための先進的な法律として、「目新しい食品」という概念が出てきつつあるようです。

 将来の展望
食料安全保障に対して昆虫が貢献しうる大きな可能性を広める取り組みには、次の大きく4つのボトルネック・挑戦が一緒に述べられることが必要です。第一に、もっと効率的に昆虫を健康食品として推奨するために、昆虫の栄養価についての更なる記述が必要です。第二に、環境をより破壊しているかもしれない伝統的な農業や家畜の飼育慣行と比較できるように、昆虫の収穫や養殖が環境に与える影響について調査されなければなりません。第三に、昆虫の採集および養殖がもたらす、社会経済への利点を明らかにし、増加させていくことも必要です、特に貧困な社会の食料安全保障に貢献するために求められています。最後に、より多くの投資を呼び込む道を整備し、(家庭内程度から産業規模まで)食料や飼料源として昆虫の生産の全ての発展と国際取引へとつなげるために、国レベル(もしくは国を跨いだレベル)での明確でわかりやすい法体系を構築する必要があります。

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日本語訳終わり


実はFAOは2008年にも報告書を出しています。5月に出された報告書は5年ぶり、ということになります。
5年前の報告書が見たい方はこちら(PDFにつき注意)

前回は各地の事例を集めたという体裁(国際フォーラムの要旨集のような形)だったのですが、今回は地域ごとでなく、各トピックごとにまとめられています。特に新しく追加された情報としては「(食用昆虫を普及させるための)コミュニケーション」「食用昆虫を取り巻く法律の有無」があります。

読む際の注意点として、「ポジティブな情報を詰め込んだ報告書」であることが挙げられます。それぞれのデータを見ると食用昆虫は良さそうに見えるかもしれませんが、算出方法や比較する昆虫によって評価が異なってくることは十分考えられます(昆虫は種類が多いですので・・・・・)


「昆虫食が世界を救う?」かは知りませんが、「世界の役に立つ可能性がある」ことを示していることは事実だと思います。


*食用昆虫の写真と特に見たい方は報告書の81ページからを参照することをおすすめします。

<吉田誠>
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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

論文「食用昆虫の栄養成分と安全面」の紹介

Review: Nutritional composition and safety aspects of edible insects
レビュー:食用昆虫の栄養成分と安全面

食用昆虫は世界に1900種いるといわれているが、その栄養に関する報告はまだまだ未知のものが多い。
上記のレビューは、かつてない非常に多くのデータ(236種の食用昆虫)をまとめて食用昆虫全般、それぞれの目の栄養価についておおよそ言えそうなことを報告している。この概要と注目すべき点を以下に紹介する。(報告者:水野)

【用語】----------------------------------
Odonata:トンボ目
Isoptera:シロアリ目
Hymenoptera:膜翅目
Orthoptera :直翅目

正味タンパク質利用率(NPU)、タンパク利用効率(PER):NPUは、摂取したタンパク質(窒素)のどれだけの割合が体のタンパク質(窒素)として保持されたかを表す。成長を指標にタンパク質の栄養価を判定する方法の一つ.成長中の動物に与えたタンパク質1gについて体重が何g増加したかを示す指標。タンパク質効率比 (protein efficiency ratio,PER) が,体重増加量で評価するのに対して,同一の条件の動物に無タンパク質食を与えて,その動物の最終体重と試験タンパク質を与えた動物の体重の差をとるところに特徴がある。

PUFA:多価不飽和脂肪酸 EPAとDHAといったω-3系脂肪酸は中性脂肪、善玉コレステロールを増やす
MUFA:一価不飽和脂肪酸 悪玉コレステロールを減らす
SFA:飽和脂肪酸 コレステロール、中性脂肪を増やす
---------------------------------------------

1.導入

236種の様々な食用昆虫のアミノ酸、脂肪酸、ミネラル、ビタミンを含む栄養成分データを編集・比較し、昆虫食のリスクとベネフィットを議論する。取り上げられたデータはかなりのばらつきがあるが、多くの食用昆虫は人間の要求に見合うエネルギーやたんぱく質、アミノ酸を含み、不飽和脂肪酸含量も高く、銅、鉄、マグネシウム、マンガンといった微量栄養素も豊富に含んでいるといえる。

2.NFE、灰分、エネルギーの評価

※計測値は乾燥重量である。
・昆虫種や発育ステージによって違いが出たが、これは飼料や飼育方法の違いによることも考えられる。

繊維:クロアリPolyrhachis vicina Roger 、蛾の幼虫Latebraria amphipyrioidesは30%と高い割合を示した。一方、マゲイという植物につく幼虫Aegiale hesperiarisは0.12%、ミツバチの幼虫は1%と低かった。コオロギBrachytrupes ssp.も1~12%と低かった。

NFE:繊維をのぞく炭水化物の量を示す。一番高いのはシロアリ目22.84%、低いのはトンボ目4.63%。高い含量を示す種は、コオロギBrachytrupes ssp.で最大85.3%、膜翅目でミツツボアリの一種?(Myrmecosistus melliger)77%、ミツバチ22~74%。

灰分:双翅目が一番高く、ハナアブの1種Eristalis spで25.95%。蚊(Krizousacorixa azteca)の卵も10.3%と多い。

エネルギー:鱗翅目においては大きくばらつきが出たが、113種の中で8割近くが400kcal/100gを超え、4割が500kcal/100gを超えた。このことから、多くの食用昆虫は食用肉のカロリーと比肩しうるものであることが示された。

タンパク質:大豆と比較しても非常に高い値を示す昆虫種が多い。特にバッタは、必須アミノ酸を豊富に含む優れた代替タンパク源として期待できる。

3.タンパク質とアミノ酸 
※たんぱく質含量は窒素含量に6.25をかけて計算
・離乳児のラットを2種のクリケット(イエコオロギAcheta domesticusとキリギリスの1種Anabrus simplex)で育てた場合、大豆で育てた場合と比較してアミノ酸スコアが同等か優れているという結果がでたという報告がある。一方カイコで育てた場合、カイコは飼料接収量、タンパク質消化率、タンパク質効率比、正味タンパク質利用率において高い値を示したにもかかわらず、カゼインよりタンパク質の質は顕著に低かった。これは蛹特有のにおいによる摂食阻害と、蛹化に伴うエクダイソンの影響によるものと思われる(①)。
・イエバエの幼虫を10-15%飼料に混ぜて育てると、ブロイラーの雛鳥の肉質が向上し、胸肉のリシンとトリプトファンが増加した。イエバエ幼虫は(乾燥重量)タンパク含量64%、タンパク質消化率98.5%という高いスペックをもつためである(④)。
・カイコの卵のアミノ酸スコアは100に対し、蛹のスコアは60(②)、カゼインは55.3(③)。
・乾燥させたミツバチと生のミツバチのキチンをアルカリ処理しタンパク質を抽出したものをラットに摂取させた結果、抽出したタンパク質の方が正味タンパク質利用率とタンパク質効率比ともに増加する(③)。カゼインや大豆との比較で昆虫のタンパク質の質は高いと評価できたが、タンパク質消化率を高めるためのキチン除去方法は検討の余地がある。

4.脂質 

・昆虫全般に魚やガチョウと比肩しうる不飽和脂肪酸の量であり、PUFAが多い(⑤)。
・牛や豚肉はほとんどPUFAを含まず、MUFA含量の方が高い。牛や豚と似たような脂肪含有率を持つのはアリであり、MUFAの占める割合は73%にのぼり(⑥)、PUFAは3%とわずか(⑧)。
・食用昆虫において飽和/不飽和の値は平均0.43~0.79であり(⑦)、明らかに不飽和脂肪酸の割合が高い。
・動脈硬化の予防のために、一日あたりEPAとDHA合計 500mgを摂取することが推奨されている。これは1週間で180gの魚を摂取することに相当する。昆虫にはEPAとDHAはわずか、あるいは全く含まれていない。ただし、SFA摂取をαリノレン酸やリノール酸といったPUFAの必須脂肪酸摂取に置き換えることで動脈硬化のリスクを減少させることができるといわれている。
・昆虫の脂肪酸の構成はほかの家畜と同様、飼料によって大きく影響される(⑨,⑩)。例えば、アメリカミズアブのEPAとDHAは魚の廃棄物を与えることによって得られる(⑪)。

5.ビタミンとミネラル
・ナイジェリア産の昆虫のほとんどがミネラル分が比較的低い。食べている物によると思われる。
・イエバエ幼虫を除き、調査した全ての昆虫はカルシウムが低く、100gあたりでは成人の所要量を満たさなかった。
・100gの乾燥重量の昆虫は1日あたり4700mgのカリウム要求量を満たさなかった。一方、ほとんどの昆虫がリンに関しては非常に高い含有量を示し、60種中24種が成人の所要量を満たした。
・ナトリウム含量は総じて昆虫は少ないが、チョウ目の幼虫ののみが高いナトリウム含量を示した。2種において100gあたり1日摂取量1500mgを超える種もある。
・77種の昆虫のうち、23種がマグネシウム所要量を満たした。
・南京虫をはじめとするOrthopteraのいくつかの種は特にマグネシウム含量が高い。
・鉄の所要量は性別や年齢によって大きくばらつく、閉経前の女性は男性や閉経後の女性の倍の鉄分が必要である。閉経前の女性の所要量を1日あたり58.5mgとすると、82種の内10種が所要量を満たし、特にcricket (Onjiri mammon) と数種のケニア産シロアリにおいて顕著であった。鉄分供給の面では昆虫は必ずしも最適とはいえないが、亜鉛に関しては多くの食用昆虫で含量が高い。特に、Orthoperaは亜鉛供給食品として機能する。昆虫食の奨励が、途上国における亜鉛欠乏症を減少させるかもしれない。
・シロアリと甲虫をのぞき、大半の食用昆虫がマグネシウムや銅の所要量を十分満たしている。つまり、昆虫食はカルシウムやカリウム摂取はほとんどできないが、微量栄養素であるマグネシウム、銅、リン、セレン、鉄、亜鉛といった微量栄養成分の供給源としては有望である。


6.ビタミン 
・昆虫のビタミン含量については報告が少なく、データに偏りが出る可能性がある。
・昆虫の乾燥重量でみると、リボフラビン(B2)、パントテン酸(B5)、ビオチン(ビタミンH、B7)に富んでいる。
・Orthoptera やColeopteraはほかに葉酸(B9)が豊富である一方、ビタミンA,C,ナイアシン、場合によってはチアミン(ビタミンB1)が不足している。
・昆虫の糞茶は100gあたり15.04mgのビタミンCを含んでいる報告もある(⑫;チョウ目の糞)、成人1日あたり45mgのビタミンC摂取を奨励しているため、1日あたり300mlの糞茶でビタミンCの所要量は満たされる。
・ビタミンE活性はαトコフェロールのみから出来るだけではなく、トコトリエノールやトコフェノールを含む抗酸化物質にも含まれるため、計測することがむずかしい。しかし、ワックスワームやイエコオロギをのぞいてほとんどの食用昆虫においてビタミンE活性が純粋なαトコフェロールからみられた。

7.リスクファクター
・アフリカのアナフェのさなぎは熱耐性チアミナーゼ(ビタミンB1分解酵素)をもち、ナイジェリアにおいてここ40年でビタミンB1欠乏症を招く原因となった。
・シアン化水素、シュウ酸、フィチン酸、タンニンの4つの抗栄養物質の量を4種の昆虫において計測したところ、いずれも人間の通常の接収量で毒性を示すほど含量は高くないことが示された(⑬)。Cirina fordaの幼虫においてもシュウ酸やフィチン酸含量は低く、タンニンは検出されなかった(⑭)。
・殺虫剤を使用したエリアで育った昆虫は安全に食べられていることも報告されている(⑮)が、殺虫剤を散布しない植物で育てる管理をすることで、殺虫剤のリスクを減らすことができる。

結論

食用昆虫は一般にエネルギー、タンパク質、脂肪、微量栄養素といった質の観点から食料として有望であると結論づけられる。しかし、栄養素は主に飼料によって強い影響を受けることは念頭に入れておくべきである。このことは逆にDHAやEPAなどを付加させたり、不必要な成分を制限したりすることができる可能性があるともいえる。
アレルゲン、抗栄養物質に関しても、さらにリサーチを行い、正しく管理していくことが必要である。


関連文献

①Finke, M. D., Defoliart, G., Benevenga, N. J., Use of a four-parameter logistic model to evaluate the quality of the protein from three insect species when fed to rats. J. Nutr. 1989, 119, 864–871.
②Rao, P. U., Chemical composition and nutritional evaluation of spent silk worm pupae. J. Agric. Food Chem. 1994, 42, 2201–2203.
③Ozimek, L., Sauer, W. C., Kozikowski, V., Ryan, J. K. et al., Nutritive value of protein extracted from honey bees. J. Food Sci. 1985, 50, 1327–1332.
④Hwangbo, J., Hong, E. C., Jang, A., Kang, H. K. et al., Utilization of house fly-maggots, a feed supplement in the production of broiler chickens. J. Environ. Biol. 2009, 30, 609–614.
⑤DeFoliart, G., Insect fatty acids: similar to those of poultry and fish in their degree of unsaturation, but higher in the polyunsaturates. Food Insects Newsl. 1991, 4, 1–4.
⑥Sihamala, O., Bhulaidok, S., Shen, L.-r., Li, D., Lipids and fatty acid composition of dried edible red and black ants. Agric. Sci. in China 2010, 9, 1072–1077.
⑦Yhoung-aree, J., in: Durst, P. B., Johnson, D. V., Leslie, R. N., Shono, K. (Eds.), Forest Insects as Food: Humans Bite Back, FAO, Bangkok, Thailand 2010, pp. 201–216.
⑧Bhulaidok, S., Sihamala, O., Shen, L., Li, D., Nutritional and fatty acid profiles of sun-dried edible black ants (Polyrhachis vicina Roger). Maejo Int. J. Sci. Technol. 2010, 4, 101–112.
⑨Ramos-Elorduy, J., Gonzalez, E. A., Hernandez, A. R., Pino, J. M., Use of Tenebrio molitor (Coleoptera: Tenebrionidae) to recycle organic wastes and as feed for broiler chickens. J. Econ. Entomol. 2002, 95, 214–220.
⑩Ritter, K. S., Cholesterol and insects. Food Insects Newsl. 1990, 3, 1–8.
⑪St-Hilaire, S., Cranfill, K., McGuire, M. A., Mosley, E. E. et al., Fish offal recycling by the black soldier fly produces a foodstuff high in omega-3 fatty acids. J. World Aquacult. Soc. 2007, 38, 309–313.
⑫Chen, X., Feng, Y., Chen, Z., Common edible insects and their utilization in China. Entomol. Res. 2009, 39, 299–303.
⑬Ekop, E. A., Udoh, A. I., Akpan, P. E., Proximate and anti-nutrient composition of four edible insects in Akwa Ibom State, Nigeria. World J. Appl. Sci. Technol. 2010, 2, 224–231.
⑭Omotoso, O. T., Nutritional quality, functional properties and anti-nutrient compositions of the larva of Cirina forda (Westwood) (Lepidoptera: Saturniidae). J. Zhejiang Univ. Sci. B 2006, 7, 51–55.
⑮Schabel, H. G., in: Durst, P. B., Johnson, D. V., Leslie, R. N., Shono, K. (Eds.), Forest Insects as Food: Humans Bite Back, FAO, Bangkok, Thailand 2010. pp. 37–64.

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