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私の昆虫食研究

末永氏の「私のイナゴ研究」に引き続き、三橋も自己紹介と研究紹介をしたい。
もし昆虫食研究を志す人が現れたとき、何かのヒントになるかもしれない。

私は現在、東京農工大学大学院の修士課程の大学院生である。
昆虫食について勉強し始めたのは、北海道大学農学部の学部2年生の時だ。
昆虫学の授業で出されたレポートのネタを探していて、図書館でたまたま三橋淳先生の「世界の食用昆虫」を手にとったのがきっかけだった。本を読み進めるうちに、「なんとなく面白そう、研究を頑張れば日本のトップになれるかも」と思い、昆虫食研究をすることを決めた。

その後、北大では昆虫学の研究室に入ったのだが、最後まで昆虫食研究を実現することはできなかった。
何の経験もない学部生が独力で行うには、研究というのは何もかもが難しすぎた。結局、ユキムシの生態研究を通じて、先生や先輩方から手取り足取り教わりながら研究というものを学んだ。

大学院は東京農工大農学府の昆虫学の研究室に進学した。
この研究室の先生は「応援するから、昆虫に関することなら何でも好きにやっていいぞ」という人だったからだ。
実際、今まで本当に好き勝手やらせてもらってきた。昆虫食研究をするには最高の環境だった。(まだ終わっていないけれど)

私のその後の進路だが、博士課程には進まず、一般的な食品化学メーカーに就職することにした。
私には博士課程という茨の道に進む勇気は無かった。昆虫食に人生を捧げるまでの覚悟は無かった。
その点、研究会メンバーの佐伯真二郎氏はすごい。
彼は紆余曲折を経て昆虫食研究で博士課程に進む予定だ。日本初の自然科学者の昆虫食博士になるかもしれない。
今後、本腰の入った昆虫食研究者が現れるかどうかは彼にかかっていると思う。


(ちょっと寄り道・・・)
何のバックグラウンドも持たずに、大学で昆虫食に関する研究を始めたいならば、どのような専攻に進めばいいのだろうか。

<素材に着目>
・農学部→昆虫学(食用昆虫の選定、養殖など)、食品工学(食用昆虫の特性分析、加工方法の開発など)
・薬学、栄養学部→食用昆虫の機能性成分の探索、栄養成分の探索など
<食べる人間に着目>
・文学部→文化人類学(どんな場所で、何のために昆虫が食べられ、どのような役割を果たしているのか?など)、心理学(何故昆虫食は嫌われるのか?など)
・経済学部→昆虫食は儲かるのか?など

見てわかるように、昆虫食研究はどんな分野からもアプローチできる
どんな学問を専攻していても昆虫食にこじつけることができる。
だから、研究に取り組むための情熱と基礎的な知識があれば、どんな環境でも昆虫食研究ができる。

ただ、昆虫食を大々的に謳っている研究室は非常に限られており、そこの先生方にはあまりいい顔をされないかもしれない。
「無理だ」と言われても独力でやり通すくらいの根性が大事だ。


さて、私の研究内容だが、大きく分けて3つのテーマを持っている。

(1) 昆虫は栄養があるのか?
 主に文献調査による。その結果、「昆虫の栄養価は特別に高いわけではなく、一般的な食品並みである」ということがわかった。また、一部の新規食用昆虫については、自身で栄養成分分析も行った。

(2) 昆虫を食べる意味とは何か?
 (1)の調査の結果、昆虫を食べる意味というのは栄養だけでは説明できないことがわかった。では、昆虫食にはどのような価値があるのだろうか。それを調べるために、私は昆虫料理の試食会を開催し、試食者の昆虫食に対する意識調査を行った。その結果、現在の日本においては、昆虫食はエンターテインメントとしての価値が高いことがわかった。

(3) 原発事故被災地域における昆虫に含まれる放射性物質の調査
 昨今の原発事故によって放射性物質が飛散し、被災地域に生息する昆虫の放射性物質汚染が危惧されている。もし現地の食用昆虫から高濃度の放射線量が検出されれば、現地での昆虫食慣行は衰退・滅亡してしまうかもしれない。また、安全に昆虫食を続けるためには、放射線量の検査が必要だと考えた。そこで、末永氏の協力を得て、福島県各地にてイナゴ・コオロギの採集、ならびに放射性セシウムの定量を行った。結果の概要は以下。
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2012/01/13/for-japan-locust-eaters-a-plague-of-cesium/#
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120112-OYT1T00052.htm

以上のように、私は特に一つのテーマに固執することなく、自由にやりたいことをやっている。

もう一つ、もっとも重要な研究成果がある。それは食用昆虫科学研究会の設立だ。
今までは昆虫食に興味を持ち、研究を始めようとした学生は独力で文献を読み、知識を蓄えていく必要があった。
しかし、今後は当研究会がこのような学生の受け皿となり、情報を提供していくことで、学生は効率的に情報を収集できるようになるだろうと考えている。
そして、今後ますます多くの昆虫食研究者が生まれ、昆虫食の可能性が拡大していくことを期待している。


最後に、私の昆虫食に対する態度についてお話したい。
私は昆虫が苦手だ。もちろん食べるのも苦手だ。
何故、苦手なのかはわからない。昆虫は別に汚いものでもないし、毒でもないし、味も悪くないことはわかっている。
だけど、苦手だ。たぶん、論理じゃないのだろう。

この考え方は多くの人に共感してもらえると思う。
昆虫食を研究するにあたっては、決して不利ではない性格だと思う。
ちょっと苦しいことも多くあるが、その分大多数の人に近い立場で研究を行うことができるから。

昆虫食がただのゲテモノ好きの道楽としてだけではなく、一般的な食材として、科学のテーマとして、多くの人に認められるような日が来ることを願う。

<三橋亮太>
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地誌学は昆虫食文化の実態を照らす学問である

 地誌学は未知の世界に対する人間の好奇心と知識欲を満足させることに貢献してきた。その一方で、国民教育や国家の発展にも寄与してきた。ヘットナーに代表される地誌学は、地域のことは何でも書く手法を用いていた。しかし、地域の個性に関する記述をいくらしても地域を科学的に理解することにはつながらず、科学的な学問ではないという批判があった。それが、20世紀後半に計量地理学が台頭した契機である。
 その後、人文地理学や自然地理学に代表するような系統地理学が台頭する。地誌学に関する見解は研究者の間でも相違がかなり見られた(中山 1996)。現在では、社会科の教員免許状申請の必修科目として地誌学の名前が残っているが、その定義について答えられる学生は少ないだろう。
 まず、地誌学の話に入る前に地理学の定義について確認しておきたい。地理学とは、「地理的条件の生成のメカニズム、そして地理的条件の間の関係について分析し、地球上の多様な現象を説明するとともに、一般的な原理を導き出すことを目的とする。」ものである(矢ケ崎ら 2007)。地理学の分析としては、分布、伝播、変化等が代表的だ。この対象を自らが関心を持つ人文的、社会的、自然的な諸要素に注目して、それ自体、もしくは組み合わせで生じる現象を解明して説明しようとする。地域には、地形、気候、土壌、植生、天然資源などの自然的な条件と、文化・伝統、政治、経済、社会、経済等の人文的な条件が無数に地域にあるので、未だ解明されていない要素の組み合わせが明らかになった時、地理学研究者としての嬉しさを感じる。
 未だ研究されていない地域を調査するための一番適切な方法は誰にもわからない。過去の文献を参照しても、その地域にしかない現象がある存在しない可能性というのは誰にも否定できないのだ。したがって、自然・社会・人文的諸要素をできるだけ多くのデータを集める必要があり、それを体系的に説明するストーリーを作る必要があるのだ。
 さて、ここで地誌学の話である。地誌学とは、「地理的条件の複合性を構造的に把握して、地域現象を説明し、地域性を明らかにする」ことである(矢ケ崎ら 2007)。ゆえに、当該地域における諸現象をできるだけ幅広く記録することが重要である。地誌学には主なものとして、以下の7つの分野がる(矢ケ崎ら 2007)。
(1)身近な地域の地誌→現地における地域調査によって地域の特徴や問題を明らかにする。
(2)歴史地誌→歴史の時間軸に沿って地域の景観、生活文化等の変化を明らかにする。
(3)グローバル地誌→世界の構造を明らかにする(国家の結びつき、グローバルの中の日本)。
(4)比較交流地誌→地域間の交流を明らかにする。
(5)テーマ重視地誌→国単位の地誌を描く。
(6)網羅累積地誌→地域の百科全書(地理的条件を網羅羅列的に記述)
(7)広域動体地誌→広域な地域の特徴を動態的に把握する。
 昨年、私は群馬県吾妻郡中之条町の寺社原集落でイナゴの地域振興について調査していた。初めは、行政とイナゴ捕り大会参加者を中心としたイナゴのグリーン・ツーリズムの生成のメカニズムに関心があった。しかし、フィールド調査によって地誌学的な視点が入ることにより、寺社原集落の地形、自然資源、伝統文化、道路行政、集落の人びとの暮らしに目が行くようになり、イナゴ研究から寺社原集落の地域の特徴の理解が何歩も進んだ。自然・人文にとらわれない発想でイナゴ捕りを見ていくと、自分独自の地域研究が出来上がる。今考えると、私の研究は(7)の動態地誌的な性格を有していたと考えられる。
 私は、地誌学は要素と要素の結びつきの未知の現象を見つけ出すための総合地理学であり、昆虫食文化研究に有効であると考えている。

中山修一 1996. 地誌学と地域研究の在り方に関する日本的解釈の展開. 地誌研年報 5 :77-92.
矢ケ崎典隆・加賀美雅弘・古田悦造 2007. 『地理学概論』朝倉書店.

末永雅洋

昆虫食はエコなのか?

オランダのワーヘニンゲン大学(Wageningen University)の昆虫学研究室では、昆虫食研究がとても盛んに行われている。
ワーニンゲン大学
建物がかっこいい。(http://www.ent.wur.nl/UK/contact/

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事にその力の入り具合を示す次のような記述があった。

We continue to make progress in the Netherlands, where the ministry of agriculture is funding a new $1.3 million research program to develop ways to raise edible insects on food waste, such as brewers' grain (a byproduct of beer brewing), soyhulls (the skin of the soybean) and apple pomace (the pulpy remains after the juice has been pressed out).

なんとこの研究室は、食品廃棄物処理のための食用昆虫の研究という名目で、オランダの農業省から130万ドル(1.04億円)もの助成金を獲得しているのだ!すごい!!



この研究室では、昆虫は牛や豚を生産するよりも温室効果ガスの発生量が少なく、非常にエコな食料である、ということを様々な場所で主張している。

オランダで「昆虫料理本」出版、人口増加に備えたタンパク質源に ロイター

昆虫の生産過程で排出される温室効果ガスの量は、豚を飼育する過程と比べて100倍少なくなるとしている。


The Six-Legged Meat of the Future, The Wall Street Journal

Insects also produce far less ammonia and other greenhouse gases per pound of body weight.
(昆虫はほかの家畜と比べて、体重あたりに排出するアンモニアと温室効果ガスの量が非常に少ない。)


Save the planet: Swap your steak for bugs and worms, Reuters

The professor at Wageningen University in the Netherlands said insects have more protein than cattle per bite, cost less to raise, consume less water and don't have much of a carbon footprint.
(ワーヘニンゲン大学の教授によると、昆虫はウシよりも、エサあたりに生産できるタンパク質が多く、飼育コストが低く、使用する水も少なく、カーボンフットプリントが小さい。)




そんな研究室から発表された論文を紹介したい。
Oonincx, D.G.A.B, et al., 2010. An Exploration on Greenhouse Gas and Ammonia Production by Insect Species Suitable for Animal or Human Consumption. PLoS ONE 5(12)
(家畜または人間の食用に供される昆虫が産出する温室効果ガスまたはアンモニアの調査)

PLos ONEという影響力を持つ学術誌に掲載されたことで、発表当時は大きな話題となった。

内容はおおまかに言うと、昆虫は温室効果ガスの排出がウシやブタに比べて少なく、昆虫はエコフードだというもの。

…であるはずだった。

試しに昆虫に対してネガティブに表を読み取っていきたい。

table 2.1
1日あたり、体重1kgあたりに放出される二酸化炭素量は、ウシやブタよりも昆虫の方が大きい。


table 3
・コガネムシは、メタンガス排出量がブタよりも大きくなる可能性がある。
・トノサマバッタは、亜酸化窒素排出量がブタより大きくなる可能性がある。
・コガネムシ、トノサマバッタは、二酸化炭素相当量がブタ、ウシよりも大きくなる可能性がある。
(温室効果への寄与度で見たとき、メタン、亜酸化窒素は、それぞれ二酸化炭素の25倍、298倍であることを考慮して換算)
・コオロギ、トノサマバッタは、アンモニア排出量がブタと同等である可能性がある。


table 4
・コガネムシは、体重1kg増加させる際に排出されるメタンガスの量がブタよりも大きい可能性がある。

また、Discussionの部分でも気になった箇所を、ネガティブに引用していこう。

All five species in the current study had a fairly high production of CO2.(5種の昆虫は、けっこう多くの二酸化炭素を排出した。) This might to a large extent be explained by ad libitum feeding during the experiment that has been reported to increase oxygen consumption fivefold [22].Reported CO2 production for inactive, unfed, Tenebrionid adults ranged between 5.4–13.3 g/kg BM/day [27], which is 5–10 times lower than observed for T. molitor in this experiment.(だけど、エサを与えずにじっとさせておいたゴミムシダマシの二酸化炭素排出量は、今回実験に用いたエサ食べ放題にさせたゴミムシダマシのそれの1/10~1/6であった。)

「今回昆虫は二酸化炭素をけっこう排出したけど、もしエサを食わずにじっとしていれば、あんまり二酸化炭素出さないよ。」なんてわざわざ言うあたりに著者の苦しさを感じる。

The CO2 production per kg BM of insect species investigated in this study was higher than for pigs or cattle (Table 3).(体重1kgあたりに排出される二酸化炭素量は、昆虫の方がブタやウシよりも大きかった。)

そして、昆虫の方が二酸化炭素を排出しうることを認めた。



さて、この論文の結論を著者はどのようにまとめているのか。

Conclusions / Significance
This study therefore indicates that insects could serve as a more environmentally friendly alternative for the production of animal protein with respect to GHG and NH3 emissions. The results of this study can be used as basic information to compare the production of insects with conventional livestock by means of a life cycle analysis.
(この研究は、温室効果ガスとアンモニアガス排出という点において、昆虫が他の家畜よりも環境にやさしい動物性タンパク源になり得ることを示唆する結果となった。この研究成果は、昆虫生産と一般的な家畜生産を、life cycle analysisによって比較するための基礎情報となるだろう。)

これを見てわかるように、著者らは「昆虫の方がブタやウシよりも環境にやさしい食料である」とは断言していない
そう、結局昆虫がエコフードであることを示すクリアな結果が出なかったのだ。

その一方で、インタビューなどに対しては自身ありげに昆虫は環境にやさしいということを言いまわっている。
一体その根拠はどこにあるのだろうか…

このオランダの研究者たちは昆虫食の真の価値を見誤っているのように思う
この辺については、また追々このブログで考えていきたい。


※この記事は「昆虫を食べることが環境にやさしくない」ということを主張するものではない。
先の論文を読めばわかるが、昆虫も種によってはウシやブタよりも環境的に優れている部分が多くあることは事実である。

この記事は、「昆虫食=エコ」という短絡的な発想によって、昆虫食の意義を考えることを放棄し、昆虫食の可能性までも制限してしまうことを避けたいがために書いたものである。

<三橋亮太>

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アメリカ人の昆虫食ビジネス

2011年5月、当時シカゴ大学の2年生のMatthew Krisiloffさん(19)を中心とした5名によって設立されたEntom Foods社が、シカゴ大学の学内ビジネスコンペティションで優勝し、1万ドルの助成金を獲得した

そのニュース記事
https://caps.uchicago.edu/cci/2011innovation_winners.shtml
http://www.nbcchicago.com/blogs/inc-well/Insect-Meat-Plan-Earns-Students-10K-121184549.html
http://timeoutchicago.com/arts-culture/14953261/the-man-who-wants-you-to-eat-insects
http://www.nytimes.com/2011/08/21/us/21cncinsects.html?_r=1
http://www.uchicago.edu/features/20111003_bugs/#.Tond3qxgz5E.twitter

今回は、以上のニュース記事をかいつまんで、意訳しながら紹介しようと思う。

<Entom Foods社の目的>
・昆虫肉(insect meat)を生産、販売するビジネスをスタートすること。(ちゃんと営利目的で)
→昆虫肉は魅力的で、型にはまらない、持続的な食料である。

・西洋諸国で昆虫食の開発をすることによって、第三世界での食生活に影響を与えること。同時に、西洋諸国における食生活をより無駄がないものに変えること。
→第三世界の人々は西洋化の波に飲まれ、昆虫食慣行を含む土着の食慣行を捨てつつある。もし我々西洋人が昆虫食慣行を見直し、第三世界の人々に「君たちの持つ昆虫食慣行は環境にやさしくて素晴らしいものなのだよ。」と訴えていれば、彼らも土着の昆虫食慣行を受け入れ、それを発展させていくことになるだろう。

<Entom Foods社が企む事業内容>
Entom Foods社は、高圧処理機(エビ殻の除去などに利用されているらしい)を用いて、コオロギの脚や翅、触覚などの外骨格をすべて除去して昆虫肉だけを取り出し、それをcutlet(ミンチにして揚げたもの?)や、ハンバーガーの具に加工し、販売する予定だ。
コオロギの他にも、バッタ、ミールワーム(ゴミムシダマシの幼虫)に注目している。

<獲得資金を利用して、行ったこと>
オランダのWageningen大学に視察に行き、そこでvan Huis教授から助言を受けた。

<Krisiloffさんの発言>
・従来の家畜は世界で生産されている穀物の70%を消費している。もったいない。それに比べて昆虫は生産効率が高く、ウシやブタ、ニワトリの代替品になるのではないか。
・昆虫は安い。コオロギ75匹でたった1ドル、ミールワーム75匹ではたった10セント。経済的である。
・社会的なマイナスイメージを取り除くためには、昆虫の外骨格を除去することが必要。西洋文化においては目、翅、脚が嫌悪感(disgust)を生む原因となっている。これらを取り除けば、昆虫はもっと美味しく、クリーンな状態になる。鶏肉のように。もしくはむきえびのように。

<van Huis教授の発言>
・昆虫はウシやブタ、ニワトリよりも生産効率が高く、温室効果ガス発生量も少ない。
・メタンは1/10、二酸化炭素は1/300しか排出しない。
・多くの食用昆虫は、牛肉と同程度のタンパク質、鉄分、ビタミンを有し、脂肪は少ない。


これら情報のソースはすべて前記のニュースサイトであるため情報量が少なく、Entom Foods社が具体的にどのような計画を持っているのかわからない。

一応、同社のホームページが存在するが、ずっとunder constructionである。
http://entomfoods.com/

計画の詳細も公表されていない。

1万ドルという割と大きな予算をコンペで勝ち取っておきながら、1年経った今も続報が無い

上記の記事を読んだだけでは、彼らの計画は稚拙であるように感じてしまう。
(昆虫は環境にやさしいから食べろ、形をなくしてしまえば食べられるだろ、と言っているだけ)

大きなコンペで優勝(決勝では26チームと競った)したからには、きっと素晴らしいビジョンがあったはずなのに…

私はそこが知りたい。


一方、アメリカにはHotlix社という昆虫菓子を生産、販売しているメーカーがある。
http://www.hotlix.com/

ここでは、以下のラインナップを揃えている。
・Worm Candy(ミールワームキャンディ)
・Cricket Candy(コオロギキャンディ)
・Scorpion Candy(サソリキャンディ)
・Ant Candy(アリキャンディ)
・Butterfly Candy(チョウキャンディ)
・Larvets(ミールワームスナック)
・Crickettes(コオロギスナック)
・Chocolate Insects(虫チョコ)

昆虫を姿形そのままお菓子にして、(たぶん)そこそこの売れ行きを持っている。


Hotlix社が生き残っているのは、昆虫を姿形のまま商品化しているからではないだろうか。

今、人々が求めているのはエコフードとしての昆虫ではなく、ゲテモノ食としての昆虫なのではないか。

昆虫の姿形が無くなれば(粉末にしてしまえば)みんな食べるようになる、という昨今の風潮は非常に乱暴な主張だと私は思う。


次回は、先述のvan Huis教授が在籍するオランダワーへニンゲン大の研究を紹介する。

また、追々「ミンチや粉末にすれば昆虫を食べるようになるのか?」ということについて考えていきたい。

<三橋亮太>

昆虫食の安全管理 その4

昆虫は新鮮なものを食べよう!

今回は、品質管理を怠ったカイコを食べることによって引き起こされる食中毒についてご紹介します。

ネタは以下の記事です。(ファイルは別にアップロードしたもの)
ProMED-mail, 2009-01-29,
food POISONING, HISTAMINE, SILKWORMS - THAILAND (SA KAEO)

以下、抜粋。

おそらく2008年、タイのSa Kaeoで、カイコフライを食べたことによるヒスタミン中毒事件が発生し、118名が中毒症状を訴え、そのうち60名が入院した。

主な症状は、顔のむくみ、嘔吐、目のかすみ、口周りのしびれ、倦怠感、肌の発疹であった。
その後、タイのRong-Klua市場で販売されていたカイコから高濃度のヒスタミン(875mg/kg)が検出された
このカイコは中国から輸入されたものであった。
アメリカでは魚を販売する際、ヒスタミン濃度は50mg/kgまでと規制されている。
このような食用昆虫の汚染はタイでは過去に報告されていなかった。

また、2006年にもベトナムのThanh Hoaで、露天で販売されていたカイコを食べたことによる中毒事件が発生している。
このときは150名以上が頭痛、めまい、目のかすみ、組織の炎症、嘔吐などの症状を訴えた。
当時、カイコに添加された化学保存料が中毒の原因だと考えられていたが、もしかしたらこちらもヒスタミン中毒だったのかもしれない。


さて、ヒスタミン中毒とは何か、ということをもう少し詳しくお話します。

東京都微生物検査情報 第26巻7号より
ヒスタミン食中毒と微生物

以下、抜粋

ヒスタミン食中毒とは?
 ヒスタミン食中毒とは、鮮度が低下したことによりヒスタミンが多く蓄積された魚介類やその加工品を喫食した直後に発生するアレルギー様食中毒で、その多くは集団給食施設や飲食店などで発生している。過去5年間(平成12年から平成16年)に都内で発生したヒスタミンによる食中毒事例を表に示した。都内では毎年数例のヒスタミン食中毒が発生しており、平成16年は2件発生している。ヒスタミン食中毒は原因物質がヒスタミン(化学物質)であるため、わが国における食中毒統計では化学性食中毒に分類されている。しかし実際には、ヒスタミンは魚肉中に多く含まれているアミノ酸の一種である遊離ヒスチジンを原料としてヒスチジン脱炭酸酵素を有する微生物によって生成される。このような生成過程からみると、ヒスタミン食中毒は細菌性食中毒に分類されるべきものとも考えられる。


ヒスタミン中毒は、鮮度が劣化したサバなどの魚介類を食べた際に発生することがある食中毒のようです

その原因は遊離ヒスチジンとのことですが、カイコに遊離ヒスチジンが多く含まれているか否かは現時点では不明です。

ただ、先述の中毒事件の発生の事例もあるので、カイコもサバなどの魚介類と同様に、鮮度が劣化した際にはヒスタミン中毒を起こしうるということは知っておいた方がいいでしょう。

 ヒスタミンは熱で分解されにくいため、加熱処理により菌は死滅したとしても、一度産生、蓄積されたヒスタミンを取り除くことは困難である。また、ヒスタミンは腐敗により産生されるアンモニアなどと違い、外観の変化や悪臭を伴わないため、食品を喫食する前に汚染を感知し回避することは非常に困難である。喫食中に、唇や舌先にピリピリと刺激を感じた場合は速やかに食品を処分することが大切である。
 ヒスタミン食中毒の予防には、食品の保全に注意を払うことが最も大切である。特に夏の時期、買った魚はその日のうちに食べ、仮に残った場合でも冷蔵庫内での長期保存を避け、速やかに冷凍するよう心がけたい。


しかし、注意するにしてもヒスタミンは試食する前に感知することができないようです。

加熱しても一度産生されてしまった毒素は消えないようです。

日本でカイコ中毒が起きたという事例は聞いたことがありませんが、カイコを食べる際には、鮮度が良く、信頼出来る業者から購入したものを選びましょう

<三橋亮太>

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私のイナゴ研究

 私は幼少のころ(80年代)、甘いものが好きでした。昼間、福島県郡山市の母方の祖母の家のテーブルには漬物や菓子が並んでいて、秋になると黒い色をしたイナゴもおやつ代わりになっていました。カルシウムがあるから体にいいと言われ、抵抗感も無くよく食べていました。甘くて臭みが無く、イナゴはチョコレートと同様に好きな食べ物でした。イナゴは当時自分の住んでいたいわき市の家にもあり、近所の家の食卓にも並んでいました。双葉郡浪江町の父方の祖父母はイナゴを捕っていませんでしたが、私の母方の祖母から送られるイナゴの佃煮を毎年楽しみにしていました。
 亡くなった父も小学校でイナゴ捕り行事をしていたと話し、母も田圃でイナゴを捕っていた経験があります。私は成長するとイナゴを食べなくなってしまいましたが、21世紀に入ってからも母方の祖母はイナゴを大量に捕り続け、近所の人におすそ分けし続けていました。
 大学院進学の際、テーマは何にしようか考えていました。特にこだわりは無かったのですが、秋にイナゴの佃煮を見て「これだ」と判断しました。イナゴに関する過去の文献を探してもほとんど見当たらなかったので、自分がイナゴの食慣行を研究する余地は十分にありそうだと考えました。実際に研究を始めると多くの人と出会い、毎日の研究生活がとても楽しく、意義のあるものでした。院生活一年目で東日本大震災に伴う原発事故で福島県のフィールドでの研究が困難になる事態になりましたが、何とか震災前の資料をもとに修士論文提出までこぎつけました。ここまで来れたのは研究会のメンバーをはじめ、私を支えてくれた多くの人たちのお蔭です。イナゴを研究して本当に良かったと思っています。

末永雅洋
 

昆虫食は飢餓を救うことができるのか?

昆虫食は飢餓を救うことができるのだろうか。

アフリカ内地など食料資源に乏しい地域において、昆虫は安価で手近なタンパク源として期待されている。
食料資源が乏しい地域において、昆虫をタンパク源として利用するにあたって考えられるメリットは以下である。

水を多く必要としない
→ウシやブタは水を多く必要とする。
昆虫は人間が食べないものを食べ、栄養に変えてくれる
(例えば、雑草や樹木、樹木の葉などを優良なタンパク質に変換してくれる)
→人間が食べられる食料を家畜に回す余裕は無い。
ウシやブタと比べて飼育コストが低い
→飼育設備費、飼料費を抑えられる

以上のような理由から、貧困地域では昆虫を育てて食べればよい、という考えは数十年前から存在していた。
しかし、実現に向けて具体的な動きがあったのは、つい先日のことだ。

Local expert gets funding to develop food based on insects
以下、上記リンクより抜粋。

アメリカの昆虫学者であるDossey氏は、飢餓が起こっている地域で、昆虫を大量に養殖し、それを食料とすることで子供たちを飢餓から救おうというプロジェクトを立ち上げ、ゲイツ財団から10万ドルの助成金を獲得した

この助成はプロジェクトの進行具合によって、最高100万ドルが増額される。

Dossey氏はコオロギ、ハエの幼虫、ミールワームを養殖し、それをクッキーか何かの生地に練り込んだ食品を作り出し、飢餓に苦しむ子どもたちを救う予定だ。


私が知る限り、ここまで大規模な予算がついた昆虫食で飢餓を救うプロジェクトは初めてだ。
具体的にどのようにプロジェクトが進むかはわからないが、今後の展開に期待したい。



さて、ここからが本題。

昆虫食が飢餓を救えない例が、わずかながら存在する

例えば、ナイジェリアでよく食べられている、Anaphe 属のシルクワーム(シャチホコガ科、以下アナフェ)の例だ。

Bolanle Adamoleken et al. (1997) Epidemic of Seasonal Ataxia in Nigeria Following Ingestion of the African Silkworm Anaphe Venata: Role of Thiamine Deficiency?
以下、上記論文より抜粋。

ナイジェリアの南西部では、雨季、大規模な運動失調症(ataxia)や意識障害が発生していた。
Ikare, Ondo Stateに起きた大発生では、人口の1.87%もの人々に症状が現れた。

後の臨床研究により、これはチアミンの欠乏症であることが判明した。

さて、そのチアミン欠乏症を引き起こしている要因はなんなのだろうか。

・発病者の92%が社会的、経済的に困窮しており、高炭水化物、低たんぱくのキャッサバばかり食べていた。
・発病者の100%が発病の前に焼いたアナフェを食べていた。

以上から、キャッサバなど高炭水化物低たんぱく食品の単食と、焼いたアナフェの摂食が運動失調症の引き金になっていることが示唆された


<発病までの流れの仮説
低収入
 ↓
青酸配糖体を含む、高炭水化物食品(キャッサバなど)の単食
 ↓
チアミンの不足
 ↓
    ←雨季、タンパク源としてアナフェの摂食
 ↓
チアミン不足の悪化
 ↓
    ←さらに高炭水化物食品の摂食
 ↓
発病。重度の運動失調
 ↓
    ←チアミン投与
 ↓
回復


続いて2000年、日本のチームがアナフェによってチアミン欠乏症が引き起こされるメカニズムを解明した。

Takahiro Nishimune et al. (2000) Thiamin is decomposed due to Anaphe spp. entomophagy in seasonal ataxia patients in Nigeria.
以下、上記論文より抜粋。

アナフェからチアミンを分解する酵素であるチアミナーゼが発見された

そのアナフェチアミナーゼの性質は以下である。

・タイプⅠというタイプのチアミナーゼ。
70℃で最も活性が高くなる
・最適pHは8-8.5。
・ピリドキシン(B16)、アミノ酸、グルタチオン、タウリン、4-aminopyridineの存在下で活性を発揮する。

ここで注目すべきは、アナフェチアミナーゼが最高活性を発揮する温度が70℃であるという点である。
0~60℃までは直線的に活性が上昇し、80℃でやっと失活し始める。
100℃にしてもピークの25%もの活性を維持する。


つまり、熱に強い酵素なのである。

現地ではアナフェを焼いて食べているが、普通に焼く程度ではチアミナーゼが失活しないのだろう。

タンパク質を得るためにイモムシを食べるが、栄養条件が悪すぎると、そのイモムシのせいでかえって悪い病気になってしまうというなんとも皮肉なお話であった。


チアミンはビタミンB1とも呼ばれ、糖質および分岐脂肪酸の代謝に用いられ、不足すると脚気や神経炎などの症状を生じる。
卵、乳、豆類に多く含有される。(Wikipediaより)

以上、実際に飢餓が起こっている地域では、食用とする昆虫の選定に注意を払う必要があるという事例紹介であった。

※すべての昆虫がこのチアミナーゼを持っているわけではありません。
アナフェ以外の昆虫では、同様の報告は聞いたことがありません。


<三橋亮太>

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

昆虫食の安全管理 その3

※お詫び 2012.5.27
記事内に誤りがありましたので、該当部分を訂正いたしました。
「私が観測した昆虫アレルギーの発症率1/2000(0.05%)は、甲殻類アレルギーの発症率0.28~0.56%とほぼ一致する」という旨の記述がありましたが、発症率の部分で一桁間違っていました。
数字を扱う身として恥ずかしく思うとともに、お詫び申し上げます。



今回も昆虫アレルギーについて考察を深めていきます。

前回、私が観測した範囲内での昆虫アレルギーの発症率は約1/2000(0.05%)であるということをお話しました。
この数値の評価のため、まず一般的な食物アレルギー(特に甲殻類アレルギー)との比較を行いたいと思います。

厚生労働科学研究事業 「食物アレルギー診療の手引き2011」には、以下のような記述があります。

わが国における食物アレルギー有病率調査は諸家の報告により、乳児が約10%、3歳児が約5%、保育所児が5.1%、学童以降が1.3-2.6%程度と考えられ、全年齢を通して、わが国では推定1-2%程度の有病率であると考えられる。欧米では、フランスで3-5%、アメリカで3.5-4%、3歳の6%に既往があるとする報告がある。


食物アレルギーは低年齢児に多く見られ、その後加齢とともに発症件数は減少していく傾向にあるようです。

低年齢児では鶏卵、牛乳、小麦に対するアレルギーを多く発症しますが、加齢と共に耐性を獲得していきます。

私が観測した昆虫食に被験者はすべて7歳以上に当てはまるので、昆虫食アレルギーの発症率は、学童以降の食物アレルギー発症率1.3-2.6%と比較をしていきます。

同じ資料中に、食物アレルギーの発症源食物の内訳が記載されています。

調査対象は、「食物摂食後60分以内に何らかの症状が出現し、かつ医療機関を受診した患者」となっています。

この内訳は年齢によって大きく異なっていることに注意してください。

<全年齢>
図1

<7~19歳>
図2

<20歳~>
図3

ここから、新規食物アレルギーの発症の原因食物は、7~19歳、20歳~ともに甲殻類が第2位となっていることがわかります。

その割合は、7~19歳では17.1%、20歳~では22.2%となっています。

さらに、政府の人口統計を利用して、7歳以上のすべての人における新規アレルギー発症の原因食物のうち甲殻類が占める割合を計算すると、21.5%となります。

以上より、7歳以上で、甲殻類アレルギーを持っている確率は、次のように計算できます。

食物アレルギーの発症率(1.3~2.6%)×原因食物が甲殻類である確率(21.5%)=0.28~0.56%

おお!私が観測した昆虫アレルギーの発症率とほぼ一致しました!
(私の方のデータはすっごく怪しいですが…)


本当に怪しいですが、昆虫アレルギーの発症率(保有率)は、他の食品と同等と言っていいのではないでしょうか。


私が観測した昆虫アレルギーの発症率は、甲殻類アレルギーの発症率を下回りました。

以上から、昆虫は、一般的な食品と比べて、特別にアレルギーを発症しやすいわけではない、ということが言えるのではないでしょうか。

もちろん、私がすべての昆虫料理試食者を追跡できたわけではないので、数値への信頼性は低いです。ご参考程度ということでご理解ください。



もう一つ、参考にしたいデータがあります。

Food Insects Newsletter, July 1995 Edition の記事です。

この記事では、昆虫に対するアレルギーの保有率を調査している実験を紹介しています。

7種の昆虫(リストは文末)から得られた透析抽出物(何のことか不明)を被験者の皮膚に塗布し、アレルギー反応を観察するという実験です。

Bernton and Brown (1967)は、昆虫の透析抽出物を利用して、既知のアレルギーを持つ被験者、持たない被験者に対してアレルギーのパッチテストを行った。その結果、

・既知のアレルギーを持つ被験者230名中、68名(29.6%)にアレルギーの陽性反応が検出された。
・既知のアレルギーを持たない被験者194名中、50名(25.8%)に陽性反応が検出された。

(合計333個の陽性反応が検出された。全テストは(230+194)×7=2968個。つまり、11%のパッチテストで陽性反応が出た。)

以上から、一般人の25%は昆虫に対して何らかのアレルギーを持つ可能性が示唆された


この調査では、非常に多くの人々にアレルギー反応が出ています。

その要因として次の2つが疑わしいと、私は考えています。

 ・昆虫抽出物が非加熱であるため、アレルゲンの活性が高かった。
 ・消化液によるアレルゲンの分解を経ていなかった。

このデータは、生で昆虫を食べた場合にアレルギー反応を発症する可能性を示唆するものとなるかもしれません。

ただし、加熱によってアレルゲンを完全に失活させることはできないようです。

同文献に以下のような記述があります。

先述の7種の昆虫抽出物を100℃で1時間加熱したところ、5種の昆虫でアレルギーの陽性反応が検出された。

ただし、そのアレルギー強度は非加熱時に比べて弱くなっていた。

また、別の実験でゴキブリの透析抽出物を使用して、同様のパッチテストを行った結果、ゴキブリの持つアレルゲンには耐熱性があることが示された。


この傾向は昆虫に特異的なものであるかはわかりませんが、加熱だけでは昆虫アレルギーは防ぐことができないことを示唆するデータとなっています。



<まとめ>

どんな食物に対しても、初めて食べるものに対してはアレルギー発症のリスクが存在する。

昆虫は特別にアレルギーを起こしやすい食物ではない。現時点では、一般食物並みといえる。

また、加熱処理によって100%ではないが、アレルギー発症のリスクを多少軽減することができる。

心配な人は、食べる前に皮膚テストを行うことが好ましい。


<パッチテストに使用した昆虫7種のリスト>
(アレルギー反応がpositiveな順)
 1. ニシメマダラメイガ Indianmeal moth, Plodia in terpunctella
 2. コクヌストモドキ幼虫 red flour beetle larvae, Tribolium castaneum 
 3. コクヌストモドキ成虫 red flour beetle adults, Tribolium castaneum 
 4. ココクゾウムシ rice weevil, Sitophilus oryzae 
 5. キイロショウジョウバエ fruit fly, Drosophila melanogaster 
 6. ヒラタコクヌストモドキ confused flour beetle, Tribolium confusum 
 7. ノコギリヒラタムシ sawtoothed grain beetle, Oryzaephilus surinamensis 
 8. コナナガシンクイムシ lesser grain borer, Rhyzopertha dominica 

<三橋亮太>

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

5月12日勉強会報告

5月12日、第11回 E-ISM 勉強会を開催しました。

場所は東大農学部。緑がキレイでとても広々としたキャンパスです。

参加者は水野、佐伯、三橋、吉田、そしてE-ISM初参加の東大の院生さん。

大学のビジネスコンテストで昆虫食で戦いたいとのことで参加してくれました
DSCF1992.jpg

その目的の達成の如何は別として、材料科学を修める彼のおかげで新しい昆虫食研究が生まれそうです。

新しいメンバーとの出会いは刺激的で、非常に喜ばしいことです。


今回の勉強会の内容は、サイエンスアゴラ2012の企画立案と、佐伯の研究進捗状況報告でした。

昨年に引き続き、今年もサイエンスアゴラに出展します。
http://www.scienceagora.org/

ご都合が付けば、是非ご参加ください。


手前みそですが、佐伯の研究は熱いです。

彼は言います。(https://twitter.com/#!/Mushi_Kurotowa/status/200136715908808705

既存のシステムに昆虫をはめ込めばどうにかなる、と考えるのは昆虫に過剰な期待をしている。目的と用途を厳密に設定し、昆虫の選定から実用化までシステム全体を設計をする必要がある。そこで初めて他の実用システムとのコスト比較が可能になる。


このように、彼は昆虫食をウシやブタの代替品として開発していくのではなく、昆虫食のための農業システムを設計し、その新しい農業システムごと昆虫食を開発していこうということを考えて研究を行なっています。

正真正銘、E-ISMのエースです。

その佐伯がおみやげにトノサマバッタと、トノサマバッタのフン茶を持ってきてくれました。

このトノサマバッタは彼が飼育しているアルビノ系統の個体です。白いです。
DSCF1986.jpg

フン茶は、沖縄のサトウキビの葉をエサにして育てたトノサマバッタのフンを炒って乾燥させたものです。
DSCF1993.jpg

DSCF1994.jpg


サトウキビの甘い香りと、さっぱり爽やかな牧草の味がして、非常に美味しかったです。

もちろん、私達がイメージする「フン」の感じはまったくありません。

メンバー全員大絶賛でした。


こうして今回の勉強会も大盛り上がりでした。

話のネタは尽きません。

興味をお持ちの方は、是非ご連絡をください。

一緒に昆虫食研究を盛り上げて行きましょう。

<三橋亮太>

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

昆虫食の安全管理 その2

さて、実際のところ昆虫アレルギーはどのくらいの頻度で起きているのでしょうか?

私(三橋)が観測した中では、1/2000程度です。


私は大学祭で毎年、昆虫料理の試食会を行なっています。

そこでは、主にカイコ蛹を使用した料理を無料で提供し、昆虫食に対する意識調査を行なっています。

非常に人気のある企画で、2年間でのべ900名以上の方が昆虫を実際に食べました。

試食者の大半は初めて昆虫食に挑戦する人でした。

そのうち、20代の男性1名がアレルギーを発症しました。

彼は過去に市販のカイコ蛹粉末を使用した料理を食べた経験があり、その時は何の異常も見られませんでした。

しかし、私の試食会に参加した時は2日間ほぼ睡眠を取らず、極度の疲労が蓄積した状態だったとのことでした。

この事例から、昆虫アレルギーを持っていなくても、疲労時にはアレルギーを発症する可能性があることがわかりました。

さて、そのメカニズムは何なのでしょうか。


仮性アレルゲンと呼ばれる物質群があります。

これは、食物に一般的に含まれるヒスタミンやコリン、セロトニンなどの食物アレルギーを引き起こしやすい性質を持つ物質群のことです。

この仮性アレルゲンを多く含む食物を、体調不良時や他のアレルギーを発症している時に食べると、食物アレルギーを発症することがあります。

昆虫にはこの仮性アレルゲンが多く含まれているのではないかと私は考えています。(根拠となるデータは持っていません)

体調不良時には昆虫に初挑戦しないことをオススメします


彼がアレルギーを発症した要因はもうひとつ考えられます。

食べた昆虫の加工度です。

彼が初めてカイコを食べたのは市販のカイコ蛹粉末(主に釣りエサ用)であり、高度に加熱、乾燥されています。

私の試食会では「新鮮なカイコ蛹の天ぷら」を提供していました。

天ぷらは高温でサクッと揚げたものであり、じっくりと長時間加熱したものではありません。

その結果、天ぷらではカイコ蛹が持つアレルゲンの活性が低下しなかった、ということが考えられます。

アレルゲンは加熱により、程度の差はありますが、活性が低下します。

初めての昆虫食は、じっくりと長時間加熱したものをオススメします


昆虫料理の試食会を行なっているのは私だけではありません。

e-ismメンバーで、昆虫料理研究家の内山昭一氏は、10年前から毎月、昆虫料理の試食会を行なっています。

毎回20名前後の人が集まるわけですから、20名×12ヶ月×10年=2400名の人々が昆虫料理にチャレンジしていることになります。

実際はリピーターも多いので、試食会で初めて昆虫を食べた人は、その半分程度の1200名だとしましょう。

そして内山氏曰く、それだけ多くの人々が昆虫食に初挑戦したにも関わらず、アレルギーを発症した人は一人もいないとのことでした。

以上から、私の試食会と内山氏の試食会で昆虫食に初挑戦した人を合計すると、約2000名となります。

アレルギー発症者は1名ですので、現時点ではアレルギー発症率は1/2000となります。


次回はこの数字が大きいのかどうかについて考えていきます。

<三橋亮太>

昆虫食の安全管理 その1

昆虫を食べるときに注意したいものあります。

それは菌でも寄生虫でも昆虫の持つ毒でもありません。

アレルギーです。


菌や寄生虫は加熱調理によりほぼ100%殺すことができますし、昆虫と人間に共通して感染して悪さをする菌や寄生虫は非常に限られています。(もちろんウイルスも)

また、スズメバチやムカデの毒はタンパク毒であるため、加熱によって変性し、無毒化します。


しかし、アレルギーを引き起こすアレルゲンには、無毒化出来ないものが多くあります。

甲殻類(エビ・カニなど)アレルギーを持つ人は、昆虫を食べない方が良いと一般的に考えられています。

昆虫は甲殻類と同じキチンを主成分とする外骨格を持つ無脊椎動物であり、甲殻類に非常に近縁な生物だからです。

そして、この両者はともに「アレルゲン性トロポミオシン」というアレルゲンを持っている可能性が高いです。

トロポミオシンとはすべての動物が筋肉中に持っているタンパク質であり、その中でも甲殻類や昆虫類が持つトロポミオシンはアレルギーを引き起こしやすいと考えられています。

甲殻類アレルギーの人にとっては、エビやカニに火を通したところで程度を抑えることはできても、発症そのものを避けることは難しいですよね。

昆虫にも同じことが言えると思います。


また、ハウスダストによるアレルギーは、空気中に舞うダニの死骸やフンなどを吸入してしまうことが大きな要因だと考えられています。

そして、このアレルギーは、ダニが持つアレルゲン性トロポミオシンによって引き起こされるものだと考えられています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002923687

よって、ハウスダストやダニのアレルギーを持つ人は、昆虫を食べるときにも同様のアレルギーが発症する可能性があります。


ご自身の持つアレルギーには十分注意して、昆虫食をお楽しみください。

次回も昆虫食の安全管理について考えていきます。

<三橋亮太>

昆虫食で就職活動 その2

就職活動における面接で昆虫食ネタを話した場合、

実際にはどのようなやり取りが繰り広げられるのか、もう少し具体的に紹介します。


まず、必ず聞かれるのは「どの虫が一番おいしいの?」ということ。

僕はいつも「カミキリムシの幼虫だ」と答えます。

カミキリムシは濃厚なバターの風味がして、蒸してちょっと塩を振るだけで非常に美味しい昆虫です。

客観的な指標でも、カミキリムシが昆虫の中で一番美味しいことは示されています。

内山昭一著『昆虫食入門』に詳しくあるので、是非ご一読を!

そのカミキリムシの美味しさを、いかに活き活きと面接官に伝えられるかを注意しました。

ここから新しい製品のプレゼン能力、食に対する興味の幅や深さを伝えることができます。


技術系での採用選考ということで、「君の昆虫食研究は、何をゴールとしているの?」ということもよく聞かれました。

これは僕にとって非常に厳しい質問です。

昆虫食文化の普及、と答えたいところではありますが、正直に言うと自分が昆虫食研究に第一線で関わっている間ではそれは無理だと考えています。

昆虫食の普及は、現代社会においてはあまりにもハードルが高い。

ですから、僕はこんなふうに答えていました。

20年後に昆虫の食料利用が実際に社会から求められたとき、スムーズに昆虫食文化を普及できるようにするための礎を築くこと

そうすると、面接官は腑に落ちない表情をします笑

しかし、僕は研究者としてウソはつきたくないし、大げさすぎることも言いたくない。

これが現在の昆虫食研究の現状だと考えています。


ほかのメンバーはどのように答えるのでしょうか…

<三橋亮太>

昆虫食で就職活動

昆虫食系の大学院生、三橋亮太です。

就職活動を行うにあたって、バイオ系の学生は不利、工学系の学生は有利、なんて話はよく聞きます。

僕も実際に就職活動をしてみると、それは事実なんだろうなぁと感じました。

それでは、昆虫食系の学生の就職活動はどうなのでしょうか…

有利です。


僕は食品業界の研究職に絞って就職活動を行ったところ、4月までに内定を3社獲得し、第一志望の香料メーカーに就職することが決まりました。

話のネタは昆虫食研究と趣味のビールだけ。


昆虫食系の学生が有利だと感じた理由…

面白がってもらえて、誰よりも目立つことができる。


面接官の目に止まるためには、何よりもまず目立つことが重要です。

とりあえず自分に興味を持ってもらえれば、一次面接は通過できるはずです。

昆虫食系学生は、その研究内容を紹介するだけで誰よりも目立つことができます。

僕はどんな集団面接でも特別扱いでした。

数多くの退屈な面接をこなす面接官たちは、僕との会話を楽しみにしていたように感じました。

楽しげに活き活きと昆虫食研究の魅力など伝えられたものなら、あくびを我慢している面接官はイチコロです。

昆虫食系学生は面接に強いのです。


あとは、食品に対して幅広い興味を持っていることをアピールできたり、

新しい食品を生み出していく創造性をアピールできます。

僕は食品業界のことしか知らないのですが、食品業界に対しては昆虫食系学生は強いと感じています。

研究テーマに悩んでいる学生のみなさん、昆虫食はいかがですか?

<三橋亮太>
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Author:E-ISM
食用昆虫科学研究会
(E-ISM ;Edible Insect Science Meeting)です。
このブログでは、E-ISMのメンバーが昆虫食に関わる色々なことを自由に気軽に書いていきます。

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