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サイエンスアゴラに出展+講演会を行います

みなさん、こんにちは。

食用昆虫科学研究会の吉田です。


告知が遅くなりましたが、今週末のサイエンスアゴラにて、講演会&ブース展示を行います。

講演会(詳細

日時 : 11月9日(土) / 10:30-12:00
場所 : 日本科学未来館 / 1階 / 特設ステージ

ブース展示(詳細

11月9日(土)、11月10日(日)2日間 / 10:00-17:00
※講演会時間中は展示、試食を行っておりません。ご了承ください。

みなさまがいらっしゃるのをお待ちしております。
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テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

FAO報告書2013 第6章 食用昆虫の栄養価値

                                         文責 水野壮
6.1栄養成分
同じグループに属する昆虫種においても発育ステージや生息環境、食べているものによって栄養価は異なる(特に、完全変態の昆虫)。大半の食料のように、調理方法によっても栄養価は大きく変化する。そのほか、分析方法の違いによっても栄養価は異なる。昆虫は一部の局所的な場所で消費される食品である(しかし、あるアフリカの地域ではタンパク消費量の5~10パーセントが昆虫である(①))ことから、さらに食用昆虫の栄養価に関するデータの収集が必要であり、食糧分析データシステムThe international Network of Food Data Systems (INFOODS)の中に食用昆虫も含められている。
RumpoldとSchluterは236種の食用昆虫の栄養成分をまとめており、主要な栄養価のバリエーションが明らかになったが、ここからも食用昆虫は人間に必要な栄養価、カロリー量、微量元素量を満たしうること示している(⑩※紹介済)。

6.1.1エネルギー
Table6.1. それぞれの地域による調理後の生体重量100gあたりのエネルギー含量情報
6.1

他のデータ
*トノサマバッタLocusta migratoriaは143~195 kcal(②)
*メキシコのオアハカ州に生息する78種の昆虫の栄養価を分析し、乾燥重量100gあたりのエネルギー含量は293~762 kcalであると結論した(③)。


6.1.2タンパク質
・食物のタンパク質の栄養価値はいくつかの要素に分かれている;
1.タンパク質含量、2.タンパク質の質(必須アミノ酸や非必須アミノ酸の構成など)、3.タンパク質消化率
・必須アミノ酸:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、トリプトファン、イソロイシン、メチオニン、ロイシン、リシン

・メキシコに生息する昆虫78種のタンパク含量は15~81%乾燥重量、タンパク消化率は76%~98%であった(③)。
・17の鱗翅目幼虫(モパニワーム等を含むSaturniidae属)のタンパク含量は52~80%乾燥重量だった(⑦)。

Table6.2 昆虫目毎のタンパク質粗抽出量
100種の様々な昆虫目のタンパク質含量を評価し、乾燥重量で13~77%のタンパク質含量を持つことが明らかになった。ただし昆虫目内外で大きな幅が生じた。(④)
6.2

・モパニワームは乾燥させた時より、ローストした時の方が低いタンパク含量。同じことがシロアリにおいてもいえる。

Table6.3 他の食用動物とのタンパク含量比較
6.3
6.32

タンパク含量は種によって様々。与える飼料によってもタンパク含量は影響を受ける。ナイジェリアのバッタにおいて、ふすまで飼育したものとトウモロコシで飼育したものと比較すると、ふすまの方が高い必須脂肪酸量を示し、タンパク含量は倍であった。

Table 6.4 Ogun州のオンブバッタの一種Zonocerus variegatusの発育ステージによるタンパク含量の違い
成虫は幼虫よりタンパク含量は高い(⑥)。
6.4

6.1.3アミノ酸
穀物のタンパク質は世界中の食料において重要な基本食料であるが、リシン、いくつかのケースではトリプトファンやスレオニンが不足することがある。いくつかの昆虫種ではこれらのアミノ酸は豊富に含まれている(⑦)。例えば、Sturniidae属の鱗翅目幼虫、ヤシオオオサゾウムシpalm weevilや水生昆虫のリシンは祖抽出タンパク質100gあたり100㎎より高い。
しかし、食用昆虫種の具体的な推奨をする際は、その地域の伝統食や基本食料、昆虫種がそこで利用可能かなどを考慮する必要がある。コンゴ共和国において、リシンが豊富な幼虫はリシンが不足しがちな基本食料の補完食物として重要である。パプアニューギニアの人々はリシンがほとんど含まれていない塊茎を食べるが、ヤシオオオサゾウムシを食べることでリシンを補っている。塊茎はトリプトファンや芳香族アミノ酸を含むが、ヤシオオオサゾウムシではそれらは少ない(⑦)。
アンゴラ、ケニア、ナイジェリアといったアフリカの国々ではトウモロコシは基本食料であるが、しばしばトリプトファンやリシンの欠乏を引き起こすことがあり、シロアリMacrotermes bellicosusを摂取することで不足を補っている。これはすでに伝統食の一部とされているところもある。しかし、すべてのシロアリがこれらのアミノ酸をふくんでいるわけではない、例えばMacrotermes subbyalinusはこれらのアミノ酸を含んでいない(⑧)。

6.1.4脂肪
ここでいう脂肪はグリセロールに3つの脂肪酸がエステル結合したトリグリセリドであり、エネルギー密度の高い多量栄養素である。
・飽和脂肪酸:
高い融点をもつ、不飽和脂肪酸より、室温では固体である。動物や熱帯産(パームやココナッツ)のオイルは主に飽和脂肪酸。
・不飽和脂肪酸
一価あるいは多価不飽和脂肪酸がある。炭素骨格間に2重結合を一つ以上もつ。代謝にはわずかなエネルギー量で済み、飽和脂肪酸よりヘルシーであるといわれている。
・必須脂肪酸
人間が合成できない脂肪酸であり、食品から摂取しなければならない。ω‐3脂肪酸(α‐リノレン酸)、ω‐6脂肪酸(リノレン酸など)はここに含まれている。
・脂肪を多く含む食用昆虫の例として、オーストラリアのWitchetty Grub※がある(乾燥重量で38%)。ω‐9一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を豊富に含む。

※Wichetty grub
Wichetty Grubは木材を食べる白色の大型の幼虫で(ボクトウガやコウモリガなどの)ガの仲間あるいは、(カミキリムシやタマムシなどの)甲虫も含む総称である。しかし、大半がボクトウガの幼虫をさし、ユーカリの木Eucalyptus camaldulensisの根で成長する。
アボリジニーの女性や子供の基本食料、砂漠で採れる最も重要な昆虫食材である。生か熱い灰で調理し、高いタンパク質と高い脂肪を含む食材である。生のWitchetty grubはアーモンドのような味がする。調理する際、表面はローストチキンのようにパリパリになり中身は明るい黄色になる。

食用昆虫は脂肪分の摂取源として有望であり、いくつかの昆虫種について脂肪の構成成分が調べられてきた。
多価不飽和脂肪酸が豊富で、必須脂肪酸であるリノレン酸やαリノレン酸を含む。二つのリノレン酸の栄養学的な重要性はよく知られており、主に子供や幼児の発育に重要である。特に荒地で必須脂肪酸を含む魚が取れない発展途上の国では、ω‐3脂肪酸とω―6脂肪酸が不足しており、この昆虫が重要な働きをしている。昆虫の脂肪酸は明らかに彼らの食料である植物の構成成分に影響を受けている。不飽和脂肪酸は急速な酸化を受けるので、加工の間に悪臭を放つことがある。

6.5

6.1.5微量元素
ミネラルやビタミンを含む微量元素は、少量の栄養価値を決める上で重要である。微量元素の不足は発展途上国ではよくおこる。

6.1.6ミネラル
Table6.6 25歳男性の推奨栄養摂取量(RDA)とモパニワームの栄養の比較
6.6

多くの食用昆虫同様、モパニワームは鉄分が豊富。多くの食用昆虫は牛と同等かそれより高い鉄分を含む⑦。トノサマバッタも与える飼料によって幅が生じるが100gあたり8-20㎎の鉄分を持つ(⑨※紹介済)。
・例えば、途上国では二人に一人の妊婦、40%の幼児が貧血症であるといわれており、このことは身体や精神の発育の阻害、死亡率の増加や労働生産力の減少に結びつく。
・亜鉛の不足は発育遅延につながる。皮膚病、下痢、骨や性の発育遅延、免疫系の脆弱化などを引き起こす。多くの昆虫は亜鉛の供給源として優れた食材といえる。例えば牛はおよそ乾燥重量100gあたり12.5㎎の亜鉛を含むが、ヤシオオオサゾウムシは26.5㎎である(⑦)。


6.1.7ビタミン
ビタミンは代謝や免疫機能を高めるために必要不可欠であり、ほとんどの昆虫に含まれている。多くの昆虫でチアミン(ビタミンB1;炭化水素をエネルギーに変える際の補酵素の働きをする)が乾燥重量100gあたり0.1-4㎎含まれている(⑦)。リボフラビン(ビタミンB2;代謝全般に機能する)は0.11-8.9㎎含まれている。一方、全粒小麦粉(ふすまも含んだ小麦粉)のビタミンB1は乾燥重量100㎎あたり0.16㎎、ビタミンB2は0.19㎎である。ビタミンB12は主に動物に含まれているが、昆虫では乾燥重量100gあたりミールワーム(0.47μg)、イエコオロギ(成虫5.4μg、幼虫8.7μg)と豊富に含まれている。しかし、多くの昆虫種のビタミンB12含量は大変低く、よりビタミンBの豊富に含まれている昆虫種の調査が必要である(⑦;⑤)。
レチノールやベータカロテン(ビタミンA)はいくつかの鱗翅目幼虫において含まれておりヤママユガの一種Imbrasia oyemensis、Imbrasia truncata、Imbrasia epimetheaはレチノール32μg-48μg、ベータカロテン6.8-8.2μgを含む。ミールワームやイエコオロギにおいてもビタミンAは乾燥重量100gあたり100μg以下含まれている(⑦;⑤;②)。一般に、昆虫はビタミンAの供給源としては適さないといえる。ビタミンEはヤシオオオサゾウムシで100gあたりαトコフェロール35㎎、β+γトコフェロール9㎎を含む。一日のビタミンE摂取量は15㎎である(⑦)。フリーズドライしたカイコの粉末は比較的高く100gあたり9.65㎎である(⑪)。

6.1.8繊維
昆虫は酸性あるいは中性の界面活性剤で定量する繊維を豊富に含んでいる。昆虫の繊維の主成分は外骨格由来の不溶性のキチンである。これまで多くのデータの蓄積があるが、定量は様々な方法で行われており、それらを比較することが難しい。キチン含量は生体重量1kgあたり2.7㎎-49.8㎎、乾燥重量1kgあたり11.6㎎-137.2㎎とされている(⑫)
 キチンはN-アセチルグルコサミンの重合体であり、植物でいう多糖のセルロースのようなものである。人間は消化液内にキチナーゼを含むことが報告されている(⑬;イタリアで行われた調査では20%がキチナーゼ活性が見られなかった)が、キチンを消化することはできないとされている。キチナーゼ活性を持つ人の割合は昆虫を普段から食べている熱帯雨林の国で顕著であるが、キチンを食べない西洋の国の人々はキチナーゼ活性を持つ人の割合は低い。

6.2牛と昆虫(ミールワームTenebrio molitor)の比較
すでにペットフード産業で大量生産が可能になっているミールワームと、牛肉とを比較した。
Table6.7ミールワームと牛肉における乾燥重量での含有成分比較
6.7

Table6.8乾燥重量1kgあたりのミールワームと牛肉のアミノ酸含量
6.8

Table 6.9ミールワームと牛肉の脂肪含量(乾燥重量1kgあたり)
6.9


6.3食材としての昆虫
6.3.1伝統食としての昆虫の役割
伝統的に昆虫を食べる国々では、西洋風の食料にシフトする傾向にあり、伝統ある昆虫食が危機にさらされている。このことを考慮し、よりポピュラーな食料と伝統ある昆虫食を融合することを実践する努力がなされている。例えばメキシコでは、ミールワームのトルティーヤなどが開発、販売されている(Don Bugito※)。

※Don Bugito
http://www.donbugito.com/
クリエイティブかつ伝統的なメキシカンフード提供車
カリフォルニアを中心に各地でミールワームやコオロギをトッピングしたトルティーヤやサルサ、タコスなどのメキシコ料理を提供している。

6.3.2伝統食としての昆虫食の重要性
Table6.11異なる国々(ペルー、コロンビア、タイ、ナイジェリア)のコミュニティにおける伝統食物
FAOらの調査で12の様々な世界の土着コミュニティで利用される栄養学的、文化的に重要な食料の名前をまとめた。

6.11

アマゾン川流域では、少なくとも32のアメリカインディアングループが陸性無脊椎動物を食料として利用している。無脊椎動物の消費は魚や狩猟が不作な際の動物性タンパクの摂取として重要な働きを担っている。

Table6.10コロンビアのある村(約100人で構成)における無脊椎動物の利用量
Guajibo(ベネズエラ)では主に昆虫、特にアブラヤシゾウムシRhynchophorus palmarumの幼虫やバッタに頼っている。雨季(7~8月)の間は60%を超える動物タンパク質が昆虫に由来する。
6.10

6.4持続可能な食物
持続可能な食物とは低い環境負荷で生産でき、将来にわたって持続的に栄養を供給可能なもののことである。生物多様性や生態系を守り、文化的に許容され、経済的な軋轢を生み出さない、安全で健康的な食物をいう。

人口増加により穀物の生産面積が圧迫され、天然資源の生産がますます悪化していき、さらに気候変動が問題となるなか、食料生産に関する問題解決は重要である。FAOは食物の多様性、栄養、消費、生産や、農業、持続可能性といった要素の共同作用や連携に取り組んでいる。この取り組みの根底にある目的は、栄養、より消費者や政策市場に環境負荷の低い食物を推奨していくことである。食用昆虫は環境負荷の低い食物である(5章参照)と同時に、さらに基本食料として、サプリメントとして期待される。

6.5緊急時における食用昆虫
非常時の状況では、病気を引き起こす最も大きな原因は栄養失調である。これは食物の量の問題だけでなく、質の問題もある。食物の供給が不安定な地域は70か国に上り、衰弱した人々は栄養強化混合食料(FBFs)の提供を受けている。FBFsとは大豆をはじめとする豆類やその他穀物を混ぜ合わせ、ビタミンなどの微量元素を添加したものである。しかし、FBFsで利用されている原料は多くの国おいて伝統食ではないため、栄養、社会、生態、とりわけ持続可能な食物の観点から適切に活用ができない問題がある。タンパク質と微量元素を豊富に含む昆虫をFBFsの原料として利用されることも検討すべきである(※)。

※伝統食を利用して子供の栄養失調を緩和するプロジェクト(Box6.6)
Winfoodはデンマークの創設されたプロジェクトで、幼児や子供の栄養条件を伝統食の改良によって改善しようというプロジェクトである。
Winfoodのコンセプトは、文化や気候も大きく異なる国であるカンボジアとケニアにおいて行われた研究とともに発展した。この研究成果をもとに、Winfoodは家庭や中小企業レベルで実践していく基本ガイドラインを発展させた。
カンボジアやケニアのローカルフードである昆虫は亜鉛や鉄分を含む伝統食材として重要な役割をしており、Winfoodの製品は以下のようなものを開発した。
Winfoodカンボジア:米、魚、クモ(タイゼブラ;Haplopelma albostriatum)
Winfoodケニヤ:アマランサスの実、トウモロコシ、魚、シロアリ(Macrotermes subhyalinus)

引用文献
① Ayieko, M.A. & Oriaro, V.2008. Consumption, indigeneous knowledge and cultural values of the lakefly species within the Lake Victoria region. African Journal of Environmental Science and Technology, 2(10): 282–286.
② Oonincx, D.G.A.B. & van der Poel, A.F.B. 2011. Effects of diet on the chemical composition of migratory locusts ( Locusta migratoria ). Zoo Biology, 30: 9–16.
③ Ramos Elorduy, J., Pino, J.M., Prado, E.E., Perez, M.A., Otero, J.L. & de Guevara, O.L. 1997. Nutritional value of edible insects from the state of Oaxaca, Mexico. Journal of Food Composition and Analysis , 10: 142–157.
④ Xiaoming, C., Ying, F., Hong, Z. & Zhiyong, C. 2010. Review of the nuritive value of edible insects. In P.B. Durst, D.V. Johnson, R.L. Leslie. & K. Shono, eds. Forest insects as food: humans bite back, proceedings of a workshop on Asia-Pacific resources and their potential for development. Bangkok, FAO Regional Office for Asia and the Pacific.
⑤ Finke, M.D. 2002. Complete nutrient composition of commercially raised invertebrates used as food for insectivores. Zoo Biology, 21(3): 269–285.
⑥ Ademolu, K.O., Idowu, A.B. & Olatunde, G.O. 2010. Nutritional value assessment of variegated grasshopper, Zonocerus variegatus (L.) (Acridoidea: Pygomorphidae), during post-embryonic development. African Entomology, 18(2): 360–364. Adriaens, E.L. 1951. Recherches sur l’alimentation des populations au Kwango. Bulletin Agricole du Congo Belge, 42(2): 227–270.
⑦ Bukkens, S.G.F. 2005. Insects in the human diet: nutritional aspects. In M.G. Paoletti, ed. Ecological implications of minilivestock; role of rodents, frogs, snails, and insects for sustainable development, pp. 545–577. New Hampshire, Science Publishers.
⑧ Sogbesan, A. & Ugwumba, A. 2008. Nutritional evaluation of termite ( Macrotermes
Subhyalinus) meal as animal protein supplements in the diets of Heterobranchus longifilis. Turkish Journal of Fisheries and Aquatic Sciences, 8: 149–157.
⑨ Oonincx, D.G.A.B., van Itterbeeck, J., Heetkamp, M. J. W., van den Brand, H., van Loon, J. & van Huis, A. 2010. An exploration on greenhouse gas and ammonia production by insect species suitable for animal or human consumption. Plos One, 5(12): e14445.
⑩ Rumpold, B.A. & Schlüter, O.K. 2013. Nutritional composition and safety aspects of edible insects. Molecular Nutrition and Food Research , 57(3).
⑪ Tong, L., Yu, X. & Lui, H. 2011. Insect food for astronauts: gas exchange in silkworms fed on mulberry and lettuce and the nutritional value of these insects for human consumption during deep space flights. Bulletin of Entomological Research, 101: 613 – 622.
⑫ Finke, M.D. 2007. Estimate of chitin in raw whole insects. Zoo Biology, 26, 105–115.
⑬ Paoletti, M.G., Norberto, L., Damini, R. & Musumeci, S. 2007. Human gastric juice contains chitinase that can degrade chitin. Annals of Nutrition and Metabolism, 51(3): 244 –251.

FAO 2013年報告書5章から 食料および飼料としての昆虫生産の環境面での可能性~昆虫は家畜と比較してエコなタンパク源となるか考える~

                                          文責 水野 壮
導入
家畜の生産量は農業用地の7割使用に匹敵する。2000年から2050年にかけて家畜生産量の需要は22900万トン~46500万トンへと倍に増加。家畜や魚介類は高い生産量をもつため、大規模生産施設は短期的にいえば経済的に実現可能であるが、環境にかかる負荷は大きい。生産量を増加させるためには、農地の拡大が必要となり、森林の減少につながる。
ここ5年間で劇的に魚介類の生産と消費量は増えたが、昆虫は魚油や魚粉の代替としても有望である。
増加し続ける需要に見合った食糧生産は技術革新によって可能になっているが、農業は人為的な気候変動を引き起こしてきており、今後は持続可能に生産するために新しい農業技術や食習慣が必要である。
新しい食習慣の一つとして、昆虫が挙げられる。昆虫食は、以下の特徴がある。
・高い飼料変換効率(体重増加量/消費飼料量)
・有機物の副生産物として利用できる、付加価値がつく。
・相対的に温室効果ガスやアンモニア排出量が低い。
・畜牛より水分消費量が低い
・動物福祉(動物への痛みやストレス軽減)の観点からの問題が少ない。
・動物由来感染症のリスクが低い
上記の利点があるにもかかわらず、西側諸国の消費者にとって昆虫食は心理的に受け入れ難い。しかし、グローバル化によって食生活の変化は迅速におこなわれてきたことは、歴史が物語っている。(よい例として、寿司の急速な普及)

昆虫を利用した副生産物
・肥料、スラリー、コンポストへの利用
・有機物系の廃棄物(動物排出物、木屑など)で昆虫を育てる
・イエバエ、キイロゴミムシダマシ(ミールワーム)、アメリカミズアブが有望
・未知の病原体や異物混入の可能性は排除できず、現状では法的に制限されている。
例:エコ・ディプテラプロジェクト
2004年にEUが進める環境保護プロジェクトLIFEの中で採択された、ハエを使って豚の糞を肥料やたんぱく質に変換するプロジェクトのこと。昆虫の新しい利用形態として注目されている。このプロジェクトの目的は、新しく生産物を消費することなく、新しい生産物をえるため、ハエの大量発生という問題と豚の排泄物処理という問題を、環境負荷を与える手段ではなく、持続可能な手段で解決するため、などがある。

水消費量
バーチャルウォーター(ある食料にかかったコストを水で換算する)で考えると、鳥肉1kgの生産に必要な水は2300リットル。豚肉1kgの生産に必要な水は3500リットル、牛肉1kgの生産に必要な水は22000リットル、昆虫の数値はないが、乾燥に耐えられることから、これらよりはるかに低いことが容易に予想される。
地球温暖化ガスとアンモニアの放出
家畜の放出する温室効果ガスは輸送部門と並ぶほど高い割合を占めており、環境負荷の軽減が求められている。家畜の主要な温室効果ガスの発生源は、糞尿と反芻動物特有の腸内細菌の発酵作用が主である。過剰なアンモニア放出は土壌から窒素を流出させ河川・海の富栄養化および土壌酸化を引き起こすことから、排出量を抑えていく必要がある。
1
2
昆虫(ミールワーム、コオロギ、バッタ)と家畜とで比較してみると、体重1kg増加あたりの温室効果ガス放出量(二酸化炭素換算)は豚や牛よりもかなり低い。
3
4
以下のTable4.は上図の引用元(Oonincx et al., 2010;②)のデータ。
5
昆虫と家畜の体重1kgあたりの必要飼料および可食部の比較は以下。トリでは2.5kg、豚では5kg、牛では10kgであるのに対し、昆虫(バッタ)の場合は1.7kgですむ。さらに、可食部で換算すると昆虫は体重の8割が可食部であり、チキンの倍、豚の4倍、牛の12倍に達する。これは昆虫が冷血動物であり、体温維持のためのコストを必要としないからと考えられる。
6
主要タンパク源生産に必要な、地球温暖化ガス放出量、エネルギー消費量、土地利用面積の昆虫(ミールワーム)と家畜の比較。各個体のライフサイクルすべてを通して計算したーデータ。土地利用面積、温室効果ガス放出量は昆虫のほうがほかの家畜より低い。一方、エネルギー消費量はわずかに鳥肉やミルクより高くなった。このことは、昆虫は変温動物であり恒温動物より温度管理が必要であることからエネルギーが余計に必要になったからだと考えられる(Oonincx and de Boer, 2012;③)。
7

ちなみに、1日分と体重あたりで計算したデータがFig5.4の引用元(Oonincx et al., 2010;②)を見ると以下のようにあるので、
8
牛とバッタが700kgに成長するまでに放出する温室効果ガス(二酸化炭素換算)量を大よそで計算してみると、以下のようになる。牛の出荷時の体重は700kg、出生から出荷までの日数を1000日、出生時の体重を30kg(東京都中央卸売市場食肉市場HPより概算)とする。

【牛】:
5.98 g/kg BM/day ×(700 kg+30 kg)× 1000 日数× 1/2 = 2,182,700 g
ちなみに、可食部1kgあたりの温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)は、可食部40%(Huis, 2013;④)とすると、
2182700 g / (700kg × 0.4) = 7795.36
【バッタ】(出生時の総体重3.5kg(0.01 g/匹×350000匹)、出生から出荷までの日数30日間とする):
2.37 g/kg BM/day × (700 kg + 3.5 kg) × 30 日数 × 1/2
=25009.43 g
同じように、可食部1kgあたりの温室効果ガス排出量は、可食部80%(Huis, 2013;④)とすると、
250009.43 g / (700 g × 0.8)= 44.66
以上より、牛一頭出荷させるのに必要な重さをバッタで同じように生産させる場合、その間に放出する温室効果ガスの量は牛の方がバッタより100倍近い。

参考文献
① FAO 2013. Edible insects: future prospects for food and feed security.
② Oonincx DG, van Itterbeeck J, Heetkamp MJ, van den Brand H, van Loon JJ, van Huis A. 2010. An exploration on greenhouse gas and ammonia production by insect species suitable for animal or human consumption. Plos. One, 5:e14445.
③ Oonincx DG, de Boer, I.J. 2012.Environmental Impact of the Production of Mealworms as a Protein Source for Humans – A Life Cycle Assessment. Plos. One, 7:e51145.
④ van Huis, A.2013. Potential of insects as food and feed in assuring food security. Annual Review of Entomology, 58(1): 563–583.






FAOの昆虫食報告書”Edible insects Future prospects for food and feed security”の要約(日本語)

こんにちは。食用昆虫科学研究会の吉田です。

最近話題になっていますFAOが出した食用昆虫についての報告書ですが、さまざまな報道機関が記事を出していますね。
ただ、その原文については、英語ということもあり、読んだ人が少ないのではないでしょうか。

→→FAOの原文ページはこちら

と、いうわけで、報告書の要約をざっと日本語に訳しました。以下が冒頭の日本語訳になります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

FAO報告書 summary 日本語訳

この日本語訳はFAO報告書"Edible insects Future prospects for food and feed security" の巻頭 ⅹⅲ~ⅹⅵページの"Executive summary" を訳したものです。

要旨
この本は昆虫の食用および飼料としての可能性を評価し、食用昆虫に関する既存の情報や研究をまとめたものです。様々な情報源や世界中の専門家による最新かつ十分なデータに基づいて評価を行なっています。
食料源や飼料源としての昆虫が注目を浴びているのは、動物性タンパク質のコストの上昇、フードセキュリティ、環境圧、人口の増加と中間所得層のタンパク質需要の増加などの21世紀の問題と特に関連があります。上記のような問題から、従来の家畜や飼料源の代わりを見つけることが急がれています。それゆえ昆虫を消費する、すなわち"entomophagy(昆虫食)"が、地球環境と健康、そして生活に対して有益に貢献するのです。
この報告書は、2003年にFAOの森林部門による小さなレポートから始まりました。そのレポートは中央アフリカでの伝統的な暮らしの中での昆虫の役割を記述し、自然環境で昆虫を収穫することが森林の持続可能性に与える影響を評価することを目標にしていました。この取り組みが、昆虫は世界の食料安全保障をのプラスとなる可能性を明らかにするために、様々な視点から昆虫採集や養殖について検証する取り組みへと発展していきました。この本の目的は、昆虫を食料や飼料として用いる多くの機会と制約について、世界に先駆けてまとめることにあります。

 昆虫の役割
昆虫は少なくとも20億人の伝統食の一部であると推測されています。1900種以上の昆虫が食料として扱われていると報告されています。昆虫は生態系サービスの主体であり、人類の生存に必要なものです。また、昆虫は作物生産のうち、受粉という重要な役割を担っており、廃棄物の再利用を通じて土壌の栄養状態を改善する、有害病種の自然由来の調節者としても重要な役割を担っています。そして昆虫は、蜂蜜や絹、蛆虫療法といった医療法などの、様々な価値を人類に提供しています。さらに昆虫は人間の文化の中にも受け入れられており、コレクションや装飾品、映画や絵画、文学にも見られます。世界的に最も普遍的に消費されている昆虫としては甲虫(甲虫目Coleoptera 31%)、芋虫(鱗翅目Lepidoptera 18%)、蜂や蟻(ハチ目Hymenoptera 14%)が挙げられます。続いてバッタ、イナゴ、コオロギ(直翅目Orthoptera 13%)、セミ、ヨコバイ、ウンカ、カイガラムシ、カメムシ(カメムシ目Hemiptera 10%)シロアリ(等翅類Isoptera 3%)、トンボ(蜻蛉目Odonata 3%)、ハエ(ハエ目Diptera 2%)そして、その他の目の昆虫が食べられています。

 文化
昆虫食は文化的、宗教的慣習に強く影響を受けており、昆虫は世界の多くの地域で食用源としてよく消費されています。しかしながら、西洋のほとんどの国では、人々は昆虫食を軽蔑し、昆虫食を原始的な(野蛮?)行為と見ています。この姿勢が農業研究における昆虫の無視・軽視につながってきました。食料としての歴史上には昆虫の使用への記述があったにも関わらず、昆虫食はかなり最近になってやっと世界中の注目を集め始めました。

 自然界の資源としての昆虫
食用昆虫は、水域から農地、森林に至るまで多種多様な環境下に生息しています。最近まで。昆虫は自然界から収穫できる無限にある資源と見られてきました。しかし、いくつかの食用昆虫は現在、絶滅の危機にあります。採り過ぎ、汚染、野火、生息地域の破壊などのたくさんの人的要因から多くの食用昆虫の生息数は減少してきました。気候変動は食用昆虫の分布と安定供給に影響するようですが、どうして影響するかはまだそれほど知られていません。この報告書は、昆虫種やその住処となる植物を守るために地域住民にが行う保全戦略や半栽培の実践について、いくつかの地域での事例研究を記載しています。このような取り組みは昆虫の生息環境の保全状況改善に貢献するでしょう。

 環境による機会
昆虫を食料や飼料として育てることの環境的な利点として、昆虫の飼料変換効率の高さが指摘されています。例えば、コオロギは1㎏重量が増えるために、たった2㎏しか要しません。さらに、昆虫は人間や動物の廃棄物を含む、副産物的な有機物でも育てる事ができ、環境汚染の削減に貢献することもできます。昆虫は牛や豚に比べ少量の温室効果ガスやアンモニアしか排出せず、牛の飼育に比べてはるかに小さい土地と少量の水しか必要としません。また、さらなる調査を必要としますが、哺乳類や鳥類に比べて昆虫は、人間や家畜、野生動物への人畜共通感染症へのリスクも小さいかもしれません。
 
 人間が消費する上での栄養
昆虫は高脂肪、高タンパク、ビタミン、食物繊維やミネラルに富んだ、高栄養かつ健康的な食糧源です。昆虫の種の多さから、食用昆虫の栄養価はかなりばらつきがあります。同じ目や科の昆虫でさえ、変態の段階、生息環境や食料などによって栄養価が異なることもありえます。例として、ミールワームに含まれるオメガ-3-酸と6種の脂肪酸は、魚類に匹敵し(牛や豚よりも多く)、そしてタンパク質、ビタミンやミネラル含量は魚類や肉類と同程度です。

 養殖システム
ほとんどの食用昆虫は野生で捕獲されます。しかし、ハチや蚕といった数種の昆虫はその生産物の価値から、家畜化の長い歴史をもっています。また昆虫は生物農薬(天敵や寄生虫として)や健康(蛆虫療法など)、そして受粉という目的のために大量に飼育されています。しかし、食料として昆虫を飼育するという概念は比較的新しいです。熱帯地方における人間の消費としての昆虫の飼育の例としては、ラオス、タイ、ベトナムにおけるコオロギ養殖が挙げられます。
温暖な地域において昆虫養殖は、ミールワームやコオロギ、バッタをペットや動物園用に大量に養殖する家族経営の会社が大きな役割を果たしています。こうした会社の中には、最近になって食料や飼料として昆虫養殖を商業化できたものもあり、人間が直接消費するための生産はまだまだごく少量です。
小数の工業規模(大規模)な企業は、アメリカミズアブなどの昆虫を大量に飼育するスタートアップの様々な段階にあります。そうした昆虫の大部分はそのまま食されるか飼料として加工されます。養殖が成功するために大切なこととして、養殖される昆虫についての生態学や養殖環境のコントロール、そして配合飼料に関する調査があります。現在の生産システムは高価であり、多くの資金を要します。そうした産業規模の養殖の挑戦の代表的なものとして、伝統的な家畜や養殖資源から、食肉(もしくは大豆のような肉代替物)生産と経済的に競合するような植物をつくるための自動栽培工程の開発があります。

 動物の飼料としての昆虫
近年の魚肉と大豆に対する高い需要と価格高騰の結果、水産物の生産増加と相まって、水産養殖や家禽のために昆虫のタンパク質を開発へ向けて新たな研究が行われています。昆虫を基本とする飼料生産物は、現在水産養殖や家畜生産の配合飼料のうち大部分を占めている魚肉や大豆と同じような市場規模へと成り得ます。昆虫を基本とする飼料は魚肉や大豆を基本とする配合飼料に匹敵することは現在までの情報からわかっています。生きているもの、そうでないものであれ昆虫は、主にペットや動物園に飼料としてニッチな市場を形作っています。

 加工
昆虫はよく丸ごと食されますが、粉末状やペースト状にも加工できます。タンパク質や脂質、キチンやミネラルを抽出することも可能です。現在のところ、そうした抽出工程はコストが高すぎるため、食品や飼料業界で産業利用できるように、利益を出し、適合させるには、さらに発展させる必要があるでしょう。

 食品の安全と保存
昆虫とその製品の加工と保存は、食品の安全を担保するために、他の伝統的な食品や飼料と同じくらい、健康および公衆衛生の規則に則っているべきです。生物学的な成り立ちから、微生物の安全、毒素、美味しさ、そして無機物質の存在といったいくつかの項目を考慮されなけらばなりません。また肥やしや食肉解体場での廃棄物といった廃棄品からの生産物で昆虫が飼育された時には、特に健康への影響は考慮しなければなりません。昆虫の摂取によってアレルギー症状が出るという証拠はほとんどありませんが、あることには間違いありません。節足動物へのアレルギー反応はいくつか報告されています。

 家畜としての改善
家事レベルであれ、企業レベルであれ、小家畜としての昆虫の採集や飼育は、開発途上国、先進国双方の人々の重要な生活基盤となります。開発途上国では、都市、地方において女性や土地を持たない住民といった社会の最貧層の人々の中でも簡単に昆虫の採集、養殖、加工、販売に関わることができる人もいます。これらの活動は直接的に彼女らの食生活を改善するだけでなく、屋台で余った昆虫を売ることによって現金収入を得ることもできるようになります。昆虫は直接的にそして容易に、自然から集めたり、最低限の技術と支出(基本的な養殖装置)で養殖したりできます。また、昆虫がすでに地元の食文化の一部となっているときには、昆虫の飼育は最小限の土地と市場への参入努力しか要しません。
タンパク質や他の栄養素の欠如は社会的に脆弱な層の中で、社会的対立や自然災害の際に典型的に広がります。昆虫の栄養価、入手の用意さ、単純な飼育技術、そして早い成長速度から、昆虫は、緊急の食料供給、社会的に脆弱な人々の生活基盤や伝統的な食事の改善などによって、栄養不足を克服する状況を安価かつ効率的に作り出せます。

 経済成長
昆虫の採集および養殖は、家庭内労働レベルであれ、大きな、産業規模な操業であれ、雇用と所得を産みます。南部および中央アフリカや東南アジアの開発途上国では食用昆虫への需要があり、市場へと昆虫を持ち込みやすく、昆虫を採集、養殖、加工して屋台で売ったり、鶏肉や鮮魚の飼料とすることは小規模の企業にとって容易に実現できます。ごく小数の例外を除いて、昆虫の国際取引はほとんどありません。先進国に対して行われる取引はしばしば、コミュニティーの移民による需要に由来したり、異文化の食品を売るニッチな市場の発展によるものです。国境での貿易は盛んで、主に東南アジアや中央アフリカで行われています。

 コミュニケーション
昆虫食の慣習を取り巻く賛成・反対といった見方は必ず、様々な利害関係者個々による、緻密なコミュニケーションによる歩み寄りを要します。昆虫食が十分に確立している熱帯では、食の西洋化の拡大に対抗するために、有望な栄養源としての食用昆虫をメディア・コミュニケーションの方針として推奨していくべきです。西洋社会では、不快な要因に対処する、メディアを通じた緻密なコミュニケーションと教育的なプログラムが必要です。昆虫が持つ食料および飼料源としての可能性について価値のある情報を提供して、食料や飼料部門の政策決定者や投資家と同様に広く一般にも訴えかけることにより、昆虫は政治的に、世界的な投資や調査の項目として認知されるかもしれません。

 法律制定
食品と飼料流通を統治する規則の枠組みはここ20年で途方もなく大きく拡大してきました。しかし、食品や飼料として昆虫を定める規制はまだほとんどありません。先進国では昆虫を食品や飼料として使うことへの明確な規則や言及が欠如しており、食品・飼料業界へ昆虫を供給するための養殖が産業的な発展するのを妨げる大きな要因となっています。開発途上国では昆虫を人間の食料および動物の飼料として用いることが実際のところ規則されているよりも広く認められています。飼料業界はより昆虫を含む基準を推し進めてリードしていくようですが、食品業界では食品として昆虫を用いることへのルールと基準を作るための先進的な法律として、「目新しい食品」という概念が出てきつつあるようです。

 将来の展望
食料安全保障に対して昆虫が貢献しうる大きな可能性を広める取り組みには、次の大きく4つのボトルネック・挑戦が一緒に述べられることが必要です。第一に、もっと効率的に昆虫を健康食品として推奨するために、昆虫の栄養価についての更なる記述が必要です。第二に、環境をより破壊しているかもしれない伝統的な農業や家畜の飼育慣行と比較できるように、昆虫の収穫や養殖が環境に与える影響について調査されなければなりません。第三に、昆虫の採集および養殖がもたらす、社会経済への利点を明らかにし、増加させていくことも必要です、特に貧困な社会の食料安全保障に貢献するために求められています。最後に、より多くの投資を呼び込む道を整備し、(家庭内程度から産業規模まで)食料や飼料源として昆虫の生産の全ての発展と国際取引へとつなげるために、国レベル(もしくは国を跨いだレベル)での明確でわかりやすい法体系を構築する必要があります。

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日本語訳終わり


実はFAOは2008年にも報告書を出しています。5月に出された報告書は5年ぶり、ということになります。
5年前の報告書が見たい方はこちら(PDFにつき注意)

前回は各地の事例を集めたという体裁(国際フォーラムの要旨集のような形)だったのですが、今回は地域ごとでなく、各トピックごとにまとめられています。特に新しく追加された情報としては「(食用昆虫を普及させるための)コミュニケーション」「食用昆虫を取り巻く法律の有無」があります。

読む際の注意点として、「ポジティブな情報を詰め込んだ報告書」であることが挙げられます。それぞれのデータを見ると食用昆虫は良さそうに見えるかもしれませんが、算出方法や比較する昆虫によって評価が異なってくることは十分考えられます(昆虫は種類が多いですので・・・・・)


「昆虫食が世界を救う?」かは知りませんが、「世界の役に立つ可能性がある」ことを示していることは事実だと思います。


*食用昆虫の写真と特に見たい方は報告書の81ページからを参照することをおすすめします。

<吉田誠>

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

論文「食用昆虫の栄養成分と安全面」の紹介

Review: Nutritional composition and safety aspects of edible insects
レビュー:食用昆虫の栄養成分と安全面

食用昆虫は世界に1900種いるといわれているが、その栄養に関する報告はまだまだ未知のものが多い。
上記のレビューは、かつてない非常に多くのデータ(236種の食用昆虫)をまとめて食用昆虫全般、それぞれの目の栄養価についておおよそ言えそうなことを報告している。この概要と注目すべき点を以下に紹介する。(報告者:水野)

【用語】----------------------------------
Odonata:トンボ目
Isoptera:シロアリ目
Hymenoptera:膜翅目
Orthoptera :直翅目

正味タンパク質利用率(NPU)、タンパク利用効率(PER):NPUは、摂取したタンパク質(窒素)のどれだけの割合が体のタンパク質(窒素)として保持されたかを表す。成長を指標にタンパク質の栄養価を判定する方法の一つ.成長中の動物に与えたタンパク質1gについて体重が何g増加したかを示す指標。タンパク質効率比 (protein efficiency ratio,PER) が,体重増加量で評価するのに対して,同一の条件の動物に無タンパク質食を与えて,その動物の最終体重と試験タンパク質を与えた動物の体重の差をとるところに特徴がある。

PUFA:多価不飽和脂肪酸 EPAとDHAといったω-3系脂肪酸は中性脂肪、善玉コレステロールを増やす
MUFA:一価不飽和脂肪酸 悪玉コレステロールを減らす
SFA:飽和脂肪酸 コレステロール、中性脂肪を増やす
---------------------------------------------

1.導入

236種の様々な食用昆虫のアミノ酸、脂肪酸、ミネラル、ビタミンを含む栄養成分データを編集・比較し、昆虫食のリスクとベネフィットを議論する。取り上げられたデータはかなりのばらつきがあるが、多くの食用昆虫は人間の要求に見合うエネルギーやたんぱく質、アミノ酸を含み、不飽和脂肪酸含量も高く、銅、鉄、マグネシウム、マンガンといった微量栄養素も豊富に含んでいるといえる。

2.NFE、灰分、エネルギーの評価

※計測値は乾燥重量である。
・昆虫種や発育ステージによって違いが出たが、これは飼料や飼育方法の違いによることも考えられる。

繊維:クロアリPolyrhachis vicina Roger 、蛾の幼虫Latebraria amphipyrioidesは30%と高い割合を示した。一方、マゲイという植物につく幼虫Aegiale hesperiarisは0.12%、ミツバチの幼虫は1%と低かった。コオロギBrachytrupes ssp.も1~12%と低かった。

NFE:繊維をのぞく炭水化物の量を示す。一番高いのはシロアリ目22.84%、低いのはトンボ目4.63%。高い含量を示す種は、コオロギBrachytrupes ssp.で最大85.3%、膜翅目でミツツボアリの一種?(Myrmecosistus melliger)77%、ミツバチ22~74%。

灰分:双翅目が一番高く、ハナアブの1種Eristalis spで25.95%。蚊(Krizousacorixa azteca)の卵も10.3%と多い。

エネルギー:鱗翅目においては大きくばらつきが出たが、113種の中で8割近くが400kcal/100gを超え、4割が500kcal/100gを超えた。このことから、多くの食用昆虫は食用肉のカロリーと比肩しうるものであることが示された。

タンパク質:大豆と比較しても非常に高い値を示す昆虫種が多い。特にバッタは、必須アミノ酸を豊富に含む優れた代替タンパク源として期待できる。

3.タンパク質とアミノ酸 
※たんぱく質含量は窒素含量に6.25をかけて計算
・離乳児のラットを2種のクリケット(イエコオロギAcheta domesticusとキリギリスの1種Anabrus simplex)で育てた場合、大豆で育てた場合と比較してアミノ酸スコアが同等か優れているという結果がでたという報告がある。一方カイコで育てた場合、カイコは飼料接収量、タンパク質消化率、タンパク質効率比、正味タンパク質利用率において高い値を示したにもかかわらず、カゼインよりタンパク質の質は顕著に低かった。これは蛹特有のにおいによる摂食阻害と、蛹化に伴うエクダイソンの影響によるものと思われる(①)。
・イエバエの幼虫を10-15%飼料に混ぜて育てると、ブロイラーの雛鳥の肉質が向上し、胸肉のリシンとトリプトファンが増加した。イエバエ幼虫は(乾燥重量)タンパク含量64%、タンパク質消化率98.5%という高いスペックをもつためである(④)。
・カイコの卵のアミノ酸スコアは100に対し、蛹のスコアは60(②)、カゼインは55.3(③)。
・乾燥させたミツバチと生のミツバチのキチンをアルカリ処理しタンパク質を抽出したものをラットに摂取させた結果、抽出したタンパク質の方が正味タンパク質利用率とタンパク質効率比ともに増加する(③)。カゼインや大豆との比較で昆虫のタンパク質の質は高いと評価できたが、タンパク質消化率を高めるためのキチン除去方法は検討の余地がある。

4.脂質 

・昆虫全般に魚やガチョウと比肩しうる不飽和脂肪酸の量であり、PUFAが多い(⑤)。
・牛や豚肉はほとんどPUFAを含まず、MUFA含量の方が高い。牛や豚と似たような脂肪含有率を持つのはアリであり、MUFAの占める割合は73%にのぼり(⑥)、PUFAは3%とわずか(⑧)。
・食用昆虫において飽和/不飽和の値は平均0.43~0.79であり(⑦)、明らかに不飽和脂肪酸の割合が高い。
・動脈硬化の予防のために、一日あたりEPAとDHA合計 500mgを摂取することが推奨されている。これは1週間で180gの魚を摂取することに相当する。昆虫にはEPAとDHAはわずか、あるいは全く含まれていない。ただし、SFA摂取をαリノレン酸やリノール酸といったPUFAの必須脂肪酸摂取に置き換えることで動脈硬化のリスクを減少させることができるといわれている。
・昆虫の脂肪酸の構成はほかの家畜と同様、飼料によって大きく影響される(⑨,⑩)。例えば、アメリカミズアブのEPAとDHAは魚の廃棄物を与えることによって得られる(⑪)。

5.ビタミンとミネラル
・ナイジェリア産の昆虫のほとんどがミネラル分が比較的低い。食べている物によると思われる。
・イエバエ幼虫を除き、調査した全ての昆虫はカルシウムが低く、100gあたりでは成人の所要量を満たさなかった。
・100gの乾燥重量の昆虫は1日あたり4700mgのカリウム要求量を満たさなかった。一方、ほとんどの昆虫がリンに関しては非常に高い含有量を示し、60種中24種が成人の所要量を満たした。
・ナトリウム含量は総じて昆虫は少ないが、チョウ目の幼虫ののみが高いナトリウム含量を示した。2種において100gあたり1日摂取量1500mgを超える種もある。
・77種の昆虫のうち、23種がマグネシウム所要量を満たした。
・南京虫をはじめとするOrthopteraのいくつかの種は特にマグネシウム含量が高い。
・鉄の所要量は性別や年齢によって大きくばらつく、閉経前の女性は男性や閉経後の女性の倍の鉄分が必要である。閉経前の女性の所要量を1日あたり58.5mgとすると、82種の内10種が所要量を満たし、特にcricket (Onjiri mammon) と数種のケニア産シロアリにおいて顕著であった。鉄分供給の面では昆虫は必ずしも最適とはいえないが、亜鉛に関しては多くの食用昆虫で含量が高い。特に、Orthoperaは亜鉛供給食品として機能する。昆虫食の奨励が、途上国における亜鉛欠乏症を減少させるかもしれない。
・シロアリと甲虫をのぞき、大半の食用昆虫がマグネシウムや銅の所要量を十分満たしている。つまり、昆虫食はカルシウムやカリウム摂取はほとんどできないが、微量栄養素であるマグネシウム、銅、リン、セレン、鉄、亜鉛といった微量栄養成分の供給源としては有望である。


6.ビタミン 
・昆虫のビタミン含量については報告が少なく、データに偏りが出る可能性がある。
・昆虫の乾燥重量でみると、リボフラビン(B2)、パントテン酸(B5)、ビオチン(ビタミンH、B7)に富んでいる。
・Orthoptera やColeopteraはほかに葉酸(B9)が豊富である一方、ビタミンA,C,ナイアシン、場合によってはチアミン(ビタミンB1)が不足している。
・昆虫の糞茶は100gあたり15.04mgのビタミンCを含んでいる報告もある(⑫;チョウ目の糞)、成人1日あたり45mgのビタミンC摂取を奨励しているため、1日あたり300mlの糞茶でビタミンCの所要量は満たされる。
・ビタミンE活性はαトコフェロールのみから出来るだけではなく、トコトリエノールやトコフェノールを含む抗酸化物質にも含まれるため、計測することがむずかしい。しかし、ワックスワームやイエコオロギをのぞいてほとんどの食用昆虫においてビタミンE活性が純粋なαトコフェロールからみられた。

7.リスクファクター
・アフリカのアナフェのさなぎは熱耐性チアミナーゼ(ビタミンB1分解酵素)をもち、ナイジェリアにおいてここ40年でビタミンB1欠乏症を招く原因となった。
・シアン化水素、シュウ酸、フィチン酸、タンニンの4つの抗栄養物質の量を4種の昆虫において計測したところ、いずれも人間の通常の接収量で毒性を示すほど含量は高くないことが示された(⑬)。Cirina fordaの幼虫においてもシュウ酸やフィチン酸含量は低く、タンニンは検出されなかった(⑭)。
・殺虫剤を使用したエリアで育った昆虫は安全に食べられていることも報告されている(⑮)が、殺虫剤を散布しない植物で育てる管理をすることで、殺虫剤のリスクを減らすことができる。

結論

食用昆虫は一般にエネルギー、タンパク質、脂肪、微量栄養素といった質の観点から食料として有望であると結論づけられる。しかし、栄養素は主に飼料によって強い影響を受けることは念頭に入れておくべきである。このことは逆にDHAやEPAなどを付加させたり、不必要な成分を制限したりすることができる可能性があるともいえる。
アレルゲン、抗栄養物質に関しても、さらにリサーチを行い、正しく管理していくことが必要である。


関連文献

①Finke, M. D., Defoliart, G., Benevenga, N. J., Use of a four-parameter logistic model to evaluate the quality of the protein from three insect species when fed to rats. J. Nutr. 1989, 119, 864–871.
②Rao, P. U., Chemical composition and nutritional evaluation of spent silk worm pupae. J. Agric. Food Chem. 1994, 42, 2201–2203.
③Ozimek, L., Sauer, W. C., Kozikowski, V., Ryan, J. K. et al., Nutritive value of protein extracted from honey bees. J. Food Sci. 1985, 50, 1327–1332.
④Hwangbo, J., Hong, E. C., Jang, A., Kang, H. K. et al., Utilization of house fly-maggots, a feed supplement in the production of broiler chickens. J. Environ. Biol. 2009, 30, 609–614.
⑤DeFoliart, G., Insect fatty acids: similar to those of poultry and fish in their degree of unsaturation, but higher in the polyunsaturates. Food Insects Newsl. 1991, 4, 1–4.
⑥Sihamala, O., Bhulaidok, S., Shen, L.-r., Li, D., Lipids and fatty acid composition of dried edible red and black ants. Agric. Sci. in China 2010, 9, 1072–1077.
⑦Yhoung-aree, J., in: Durst, P. B., Johnson, D. V., Leslie, R. N., Shono, K. (Eds.), Forest Insects as Food: Humans Bite Back, FAO, Bangkok, Thailand 2010, pp. 201–216.
⑧Bhulaidok, S., Sihamala, O., Shen, L., Li, D., Nutritional and fatty acid profiles of sun-dried edible black ants (Polyrhachis vicina Roger). Maejo Int. J. Sci. Technol. 2010, 4, 101–112.
⑨Ramos-Elorduy, J., Gonzalez, E. A., Hernandez, A. R., Pino, J. M., Use of Tenebrio molitor (Coleoptera: Tenebrionidae) to recycle organic wastes and as feed for broiler chickens. J. Econ. Entomol. 2002, 95, 214–220.
⑩Ritter, K. S., Cholesterol and insects. Food Insects Newsl. 1990, 3, 1–8.
⑪St-Hilaire, S., Cranfill, K., McGuire, M. A., Mosley, E. E. et al., Fish offal recycling by the black soldier fly produces a foodstuff high in omega-3 fatty acids. J. World Aquacult. Soc. 2007, 38, 309–313.
⑫Chen, X., Feng, Y., Chen, Z., Common edible insects and their utilization in China. Entomol. Res. 2009, 39, 299–303.
⑬Ekop, E. A., Udoh, A. I., Akpan, P. E., Proximate and anti-nutrient composition of four edible insects in Akwa Ibom State, Nigeria. World J. Appl. Sci. Technol. 2010, 2, 224–231.
⑭Omotoso, O. T., Nutritional quality, functional properties and anti-nutrient compositions of the larva of Cirina forda (Westwood) (Lepidoptera: Saturniidae). J. Zhejiang Univ. Sci. B 2006, 7, 51–55.
⑮Schabel, H. G., in: Durst, P. B., Johnson, D. V., Leslie, R. N., Shono, K. (Eds.), Forest Insects as Food: Humans Bite Back, FAO, Bangkok, Thailand 2010. pp. 37–64.

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